独政府与党は26日、求職者基礎保障制度(いわゆる「ハルツ4」)の一般給付金額に新しい算定方式を導入し、大人の給付額を月当たり5ユーロ引き上げ364ユーロとすることで合意した。現行の算定方式に対し連邦憲法裁判所(BVerfG)が今年2月に違憲判決を下したことを受け、与党はこれまで憲法裁が提示した条件に見合った方式を模索してきた。ただ、新たな支給額は福祉団体などが要求する水準を大きく下回っており、野党は「人間に値する最低限度の生活」を依然として保証していないなどと批判。議会での法案阻止や新たな違憲訴訟に踏み切る構えをみせている。
\ハルツ4は2005年に導入された。その骨子は長期失業者と就労能力のある生活保護受給者を対象に新たに「第2種失業手当」を設置したうえで、給付水準を従来の生活保護よりも低く設定するというもので、政府はこれにより就労の促進を狙った。
\手当は食費や衣料費、交通費、娯楽費などからなる一般給付金(Regelsatz)と家賃・暖房費給付金の2種類で構成されており、合計の給付額は世帯の構成人数、子供の年齢などにより異なってくる。カール・ブロイヤー研究所が『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の委託で行った調査によると、独身の場合は現在、一般給付金が月359ユーロで、家賃・暖房費を合わせた総支給額は平均637ユーロとなっている。子供が2人いる4人家族では総支給額が平均1,653ユーロに上る。
\これらの額は連邦統計局が5年に1度実施する市民アンケート調査をもとに算定・改定される。また、子供の一般給付金は成人よりも額が低く、6歳以下は215ユーロ(成人の60%)、7~14歳は251ユーロ(同70%)、15歳以上は287ユーロ(80%)となっている。
\連邦憲法裁はこのルールについて金額の算定方法が恣意的だと指摘。特に子供については授業でノートや計算機などを必要とするにもかかわらず、教育関係の出費が一般給付金にまったく組み込まれていない点を強く批判した。そのうえで、支給額の決定に当たっては日常生活で最低限度必要とする費用を現実に即して計算し、分かりやすく市民の納得がいくような支給額の算定ルールを2011年1月までに施行するよう命じた。現行の給付金の額が高いか低いかについては「憲法の規定から金額を直接導き出すことはできない」として、判断を示していない。
\ \市民の過半数は引き上げに反対
\ \与党はこれを受け、一般給付金の算定基準を変更した。具体的には、連邦統計局の家計統計で所得水準が最も低い世帯20%(ハルツ4の受給者を除く)の支出を基準とするこれまでの方式を維持し、食料品などの生活必需品についても最下層の勤労者の支出と同じ額を支給するものの、たばこ・酒などのし好品や自家用車などは支給額の算定対象から全面的に除外した(表1を参照)。これにより給付金総額の膨張を抑制するとともに、勤労者に不公平感が生じないよう配慮。所轄大臣のフォンデアライエン労働相は「受給者が家計の支出を増やしたいのであれば、仕事に就かなければならない」との立場を明確に示した。
\子供の給付金額は新方式で産出するとこれまでの支給水準を下回るものの、与党は金額を据え置くことで合意した(表2を参照)。授業に不可欠な文房具や、学力向上・人格形成のうえで重要な補習、スポーツクラブ・文化的イベントなどへの参加については、現物やクーポン券を支給することで対応する。現物やクーポン券を給付するのは、現金を支給すると親が別の用途に使ってしまう恐れがあるためだ。
\野党は大人の一般給付金額を400~420ユーロへと大幅に引き上げることを要求してきた経緯があり、今回の与党合意に対する批判は強い。州の代表からなる連邦参議院(上院)では現在、与党が過半数割れとなっており、与党合意が実現するかは不透明だ。
\一方、市民は給付金の引き上げを支持していない。世論調査機関のEmnidが実施したアンケート調査では56%が引き上げに反対。引き下げを要求する回答も14%に上った。
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