Deutsche Bahn(DB、ベルリン)の高速鉄道ICEが19日、仏カレー(Calais)と英フォークストーン(Folkstone)を結ぶ英仏海峡トンネルで初の試験走行を行い、ロンドンのセントパンクラス駅に到着した。DBは今後3年以内に本格的な直通運転を目指す。ただ、営業開始に向けたインフラや発券システム整備などの課題が残されているほか、ドイツの「快挙」にフランス側があからさまに不快感を表明するなど、開業への道のりは平たんではないようだ。
\ICEの英国乗り入れはハルトムート・メードーン前社長時代からの悲願。フランス側はこれまで、「安全性への懸念」を理由にICE車両のトンネル走行に強い難色を示してきたが、今月1日の独仏鉄道サミットでフランス側が自国の鉄道市場の開放を確約したことに加え、稼働率の低迷にあえぐ英仏海峡トンネルの運営事業者(Eurostar International)が仏Alstom製の高速鉄道「Eurostar」以外の列車乗り入れに前向きになったことで風向きが一変。DBはフランス側の懸念を払しょくするため、試験走行に先立ちトンネル内で安全試験も実施し、問題がないことをアピールした。
\ドイツから英国までの乗り入れが実現した場合、DBはEurostar International同様に出国手続きやセキュリティチェックを行う専用ターミナルの設置や、全席指定・乗車前発券(車内でのきっぷ購入・精算不可)というフランス式の乗車券システムを導入する必要がある。車内精算ができることに慣れているドイツ人にとって列車の事前予約制は煩雑に感じられることから、利用客の不興を買わないような工夫が求められる。
\ドイツと英国がICEの乗り入れを歓迎する一方、フランス側は懸念を隠さない。Eurostar InternationalはDBの試験走行に先立つ7日、次世代車両として独Siemens製の高速鉄道「Velaro」を導入すると発表した。フランス国鉄(SNCF)を通してEurostar Internationalの過半数株を保有するフランス政府にとってこの決定は寝耳に水だったようで、ビュスロー運輸相はあからさまに不快感を表明。また、これまでEurostar車両を独占的に供給してきたAlstomは、ICE3型車両(シーメンス製)による試験走行後の20日、入札の無効を求める訴えを起こした。
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