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2010/11/10

ゲシェフトフューラーの豆知識

異動命令、不当であれば被用者は以前の業務に復帰

この記事の要約

営業法106条に雇用主の指示権(Weisungsrecht des Arbeitsgebers)という権利が明記されている。これは従業員がどう行動すべきかを「公正な裁量に基づいて(nach billigem Ermess […]

営業法106条に雇用主の指示権(Weisungsrecht des Arbeitsgebers)という権利が明記されている。これは従業員がどう行動すべきかを「公正な裁量に基づいて(nach billigem Ermessen)」命じること雇用主に認めたもので、会社や官庁が業務を推し進めていく上で重要な権利である。従業員が命令に従うのを嫌がっても、これを根拠に服従を要求できるからだ。

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では、従業員に対しどこまで要求することができるのかと言うと、これはケースバイケースで一概には言えない。今回は最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が8月に下した判決(訴訟番号:10 AZR 275/09)に即してこの問題をお伝えする。

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裁判を起こしたのは全国的に事業展開する会計事務所に1986年から勤務する公認会計士。同氏はパートナーとして、ライプチヒ事務所の税務部門を統括していたが、会計事務所から部下に対する指揮能力や顧客対応能力が低いと判断され、雇用契約の解除を提案された。

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その受け入れを拒否したところ、2007年5月にフランクフルト事務所にセールス担当マネージャーとして異動することを命じられた。同年7~10月の4カ月間はこの命令に従ったものの、その後、「雇用契約にはライプチヒ事務所の部門統括者として勤務することが明記されている」と主張。異動命令は不当だとして、その撤回を求める裁判を起こした。指示権は無効だと主張したわけである。

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原告は第1、2審で勝訴した。これに対し連邦労裁は、第2審判決では契約文書に記された勤務地に関する規定の検討が不十分だとして裁判を第2審のザクセン州労働裁判所に差し戻した。裁判官はその際、営業法106条の規定を指摘。フランクフルトへの異動命令が労働契約に違反していることが確定した場合、会計事務所は原告をライプチヒでの元の職務に復帰させなければならないとの判断を示した。

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■営業法106条

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雇用主は労働契約、社内の労使合意、業界労使の合意、あるいは法的な規定によって労働条件が定められていない限りにおいて、勤務の内容、場所、時間を公正な裁量に基づいて詳細に決定できる。このことは職場における秩序と被用者の行動にも当てはまる。雇用主はこの裁量(注:指示権を指す)を行使する際に、被用者の障害も考慮しなければならない。

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