欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2010/11/24

経済産業情報

「あと2~3年は生きるだろう」

この記事の要約

長年連れ添ったロキ夫人を1カ月前に亡くしたヘルムート・シュミット元首相が再び公的な場に姿を現した。自ら設立したドイツ国民財団の年次総会に16日に出席。その後はマスコミのインタビューにも応じ始めている。\ ロキ夫人は9月末 […]

長年連れ添ったロキ夫人を1カ月前に亡くしたヘルムート・シュミット元首相が再び公的な場に姿を現した。自ら設立したドイツ国民財団の年次総会に16日に出席。その後はマスコミのインタビューにも応じ始めている。

\

ロキ夫人は9月末に転倒して足を骨折。手術して自宅に戻ったものの10月21日早朝、一人娘のズザンネさんに看取られながら息を引き取った。享年91。

\

シュミット元首相はこのとき、自宅にいなかった。どうしても外せない仕事があったためだ。これについて『ビルト』紙に対し「彼女の死期が近付いていることは死の数週間前から予感していた。ただ、あと1~2週間先になると思っていた」と語った。

\

今月2日に行われたロキ夫人の埋葬にはメルケル首相やシュレーダー前首相、ヴァイツゼッカー元大統領などが参列したほか、何百万人もの市民がテレビ中継を視聴した。

\

元首相はその2日後から仕事に復帰し、27年前から編集委員を務める高級週刊紙『ツァイト』でデスクワークに励んでいる。難聴が進み1年前からは車椅子の生活を送っているにも関わらず、「引退」は全く念頭に置いていないようだ。「愛する神は私を働く動物としておつくりになった」(『ハンブルガー・アーベントブラット』紙の取材)とのことで、これが妻の死に伴う苦痛を和らげているという。

\

「旧友は(妻の死に悲しむ)あなたの力になってくれますか」との質問に対しては「旧友はほとんど死んでしまったよ」とあっさり切り返した。話し相手の盲点を巧みに突く冷静さは健在である。

\

ドイツ人のアイデンティティを欧州統合のなかで強化することを目的に1993年に設立したドイツ国民財団。今年の総会で演壇に立ったフランス人政治家シルヴィ・ゴヤール氏が、アリスティード・ブリアン(ノーベル平和賞を受賞した20世紀前半の仏政治家)、ロベルト・シューマン(19世紀前半のドイツの作曲家)、コンラート・アデナウアー(西ドイツの初代首相)の3人は欧州合衆国を夢見たと前置きしたうえで、「この3人は諸国民の分断を克服した」と発言した際、シュミット元首相は賛同の拍手をしたという。

\

1人暮らしとなった現在、食事は1人で済ませており、夕食は家政婦が作り置きしたものを冷蔵庫から取り出して食べる。この時間はおそらく喪失感を最も強く感じるのではなかろうか。

\

「あと2~3年は生きるだろう」とのこと。シュミット元首相のファンであれば、切れ味のよい論考を2~3年などと言わずずっと書き続けてほしいと思うだろう。

\
企業情報
経済産業情報
COMPANY |
CATEGORY |
KEYWORDS |