建設大手の独ホーホティーフは6日、中東の産油国カタールを新たな出資者として迎え入れる計画を公表した。同社はスペインの同業ACSに敵対的な買収を仕掛けられており、今回の措置は防御策としての意味合いが強い。カタールはサッカー・ワールドカップ(W杯)の2022年大会を2日に射止めており、今後は開催に向けた大型インフラプロジェクトが目白押し。これらプロジェクトに深くかかわるホーホティーフに助け舟を出したとみられる。
\ホーホティーフはカタールの国営投資会社Qatar Holdingを対象に年内にも第3者割当増資を実施する。発行価格は1株当たり57.114ユーロで、同計画発表前の時価とほぼ同じ水準。総額は約4億ユーロに上る。Qatar Holdingはホーホティーフ株9.1%を取得し、ACSに次ぐ第2位株主となる。(グラフを参照)
\ホーホティーフのヘルベルト・リュトケシュトラートケッター社長は、今回の計画は年初段階から協議を進めており、ACSの敵対的買収に対する防御を狙った措置ではないと強調した。増資収入はインド、カナダでの事業拡大や風力発電事業の強化に充てるとしている。
\ただ、増資によりACSの出資比率は現在の29.98%から27.3%に低下。また、増資計画を発表したことでホーホティーフの株価が大幅に上昇したため、ACSにとって買収のハードルが高くなったのも事実だ。ACSは今後の対応についてコメントを控えている。
\一方、Qatar Holdingのアフマド・モハメド・アルサイード最高経営責任者(CEO)は6日、「建設的な仲裁者となり(ACSを含む)全利害関係者にとってウイン・ウインの状況を作り出したい」と明言しており、ホーホティーフとACSの対立を調停する考えのようだ。
\サッカーW杯開催に向けた巨大なインフラプロジェクトは調停を実現するうえで大きなカードとなる可能性がある。
\カタール投資庁(QIA)によると、同国はインフラ整備に向けて2016年までに約1,300億ドルを投資する計画。猛暑に対応できる冷房機能付きサッカースタジアムの建設のほか、長距離鉄道や首都ドーハの地下鉄網敷設が予定されている。
\ホーホティーフは同国に子会社を5つ持ち、計5,000人を雇用しているため、これらのプロジェクトに大きく関与するのはほぼ確実で、すでに現地企業と共同で巨大ショッピング街や人口20万人の新都市を建設するプロジェクトを進めている。
\カタールは中東の他の産油国と同様、石油資源の枯渇後をにらんだ投資活動を活発化させており、昨年は独自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)とポルシェに資本参加した。技術移転に対する関心は高く、今後も最先端技術を持つドイツ企業への出資の機会をうかがうとみられる。(表を参照)
\中東資本と独経済界の関係は比較的古く、クウェートがダイムラーに出資したのは第1次石油ショックが発生した翌年の1974年だ。中東の国営投資会社は経営に細かな口をはさまないため、ドイツサイドの警戒心は低い。今後は出資の狙いが単なる資金運用やプレステージから技術の獲得へと変わっていくため、こうした蜜月関係が続くかが注目される。中東諸国は石油化学の分野ではすでにドイツ企業を脅かす存在となっており、BASFはスチレン系樹脂事業を英イネオスとの合弁会社に移管する予定だ。
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