機密情報暴露サイト「ウィキリークス」が11月末に公開した米外交公電。その反響はドイツでも大きく、公共第1放送ARDの政治トークショー「アンネ・ヴィル」は11月28日の放送を急きょ、このテーマに切り替えたほどだ。ドイツを代表する政治家が米国の外交官から酷評されているとなれば、市民やメディアの関心が高まるのは当然かもしれない。
\では一体、誰がどんな風に評価されたのかと言うと、メルケル首相は「リスクを避け創造性に欠ける」「国内でポイントを稼ぐという立場から外交を行っている」とのことで、かなり手厳しい。最悪の評価を受けたのはヴェスターヴェレ外相(自由民主党=FDP=党首)で、「外交経験が乏しい」「無能」「うぬぼれが強い」「感情的な性格のためメルケル首相との争いをうまく収めることができない」といった具合だ。
\赴任先の国の情勢分析をすることは外交官の基本的な任務であり、こうした政治家の評価はどの国でも行っている。その意味ではお互いさまである。だが、実際にその内容が漏れてしまうと、酷評された本人は不愉快極まりないだろうし、めんつも立たない。ドイツ政府は今回の件で「米国政府とのバラ色の関係は決して濁らない」(政府報道官)などと火消しに努めているが、外交も人間関係が重要であり、今後微妙な影を落とすのではなかろうか。
\ところで今回のリークではもう一つ重要な問題が暴露された。昨年行われた連立政権交渉の内容をFDPの関係者が米国の外交官に漏らしていたことが明記されていたのである。文書にはこの関係者について「若くやる気のある党員」と書かれており、『シュピーゲル』誌によると、党内では早い時点で「容疑者」が5人に絞られたようだ。つまり、調査すれば誰がリークしたかがすぐ分かるということである。
\だが、ヴェスターヴェレ党首は「そんなこと(FDPの党員が情報を米外交官に渡していたこと)はないと思う」として、調査の実施に消極的だった。そうは言っても、やはり調査をしないわけにもいかず、嫌疑がかかった党員全員に事情を聞いたところ、2日になって1人が白状したという。
\この人物はヴェスターヴェレ党首の事務所の責任者。まさに側近中の側近である。即日付で解任されたものの、ウィキリークスの暴露はだだでさえ落ち目の同党首にとって手痛いダブルパンチとなった。
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