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2011/1/5

経済産業情報

ナノギャップ構造の精密制御が可能に、問題解決のカギは自己組織化

この記事の要約

ヴュルツブルク大学のベルト・ヘヒト教授(物理学)を中心とする国際研究チームが、精密なナノギャップ構造を高い歩留まりで作成する新たな手法を開発した。自己組織化と呼ばれる現象を利用して金ナノプレート単結晶を生成したのち、イオ […]

ヴュルツブルク大学のベルト・ヘヒト教授(物理学)を中心とする国際研究チームが、精密なナノギャップ構造を高い歩留まりで作成する新たな手法を開発した。自己組織化と呼ばれる現象を利用して金ナノプレート単結晶を生成したのち、イオンビームでパターンを作成するもので、従来の蒸着法で作成した金薄膜に比べ精密なパターン制御が可能という。

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ナノギャップ構造は、ナノ構造を持つ金や銀などの2つの金属ナノ構造体の間に数ナノメートル(nm)の微小な隙間(ギャップ)を挟んで隣接させる構造。ギャップモードプラズモン共鳴と呼ばれる現象によって非常に高い光吸収(封じ込め)効果が生まれるため、高効率の光アンテナや次世代の光電変換素子としての応用が期待されている。

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ヘヒト教授によると、理想的なナノギャップ構造は「金ナノ構造体の長さが2つ合わせて300nm、ギャップは10nm以下」。しかし、蒸着によって基盤の上に積層していく従来の手法ではナノ粒子が粗すぎるため、必要な構造に削っていく段階で形が不ぞろいになるなど、光アンテナの効果を発揮する精密なギャップや原子レベルの金属表面構造を実現することが極めて困難という問題があった。

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研究チームはこれを踏まえ、ひとりでに秩序正しい構造やパターンを作る「自己組織化」という性質を利用して金ナノプレート単結晶を作成、収束イオンビームを照射してナノギャップを成形した。金ナノプレートの原子構造は極めて均質で、パターン成形時に不ぞろいになることもなく高い歩留まりとなった。ヘヒト教授は「ビームでカットした切り口はまるで金原子の単一層のように滑らかだった」と驚きを隠せない様子だ。

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今回の研究結果は『Nature Communication』誌に掲載された。

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