チュービンゲン大学のカーリン・クリンゲル教授を中心とする国際研究チームが、インフルエンザウイルスを宿主の細胞核に運び込むアダプター分子の特定に成功した。チームは今回の発見が新たな抗インフルエンザ薬の開発につながることに期待を寄せている。
\細胞核と細胞質の間には核膜孔と呼ばれる輸送通路のようなものがあり、核と細胞質間の物質の移動はこの核膜孔を介して行われる。物質を核内に輸送するのはimportinα/βと呼ばれる核輸送担体で、importinβは核孔を認識して核内に複合体を移動させる。importinαはアダプター分子で、importinβと物質(ここではウイルス)をつなぐ役割を果たす。importinは互いに類似した6種類のバリアント(アイソフォーム)が知られているが、特にヒト、鳥類、ウマ、ブタなど異なる動物に感染するA型インフルエンザでは、どのアイソフォームが核内移行に関与しているかはこれまで分かっていなかった。
\チュービンゲン大、ハンブルク大、英オックスフォード大などからなる国際研究チームは、それぞれのアイソフォームをノックダウンした細胞とノックアウトしたマウスにウイルス接種を行い、核内移行の結果として起こるウイルスの複製がどの程度行われるかを調べた。この結果、鳥類に感染するウイルスではimportin αのうちα-3と呼ばれるアイソフォームが、哺乳類に感染するウイルスではα-7がそれぞれ複製で重要な役割を果たしていることを確認。また、新型インフル(H1N1v)はα-3とα-7の両方が必要なことを突き止めた。
\研究の成果は『Nature Communications』で閲覧できる。
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