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2011/3/2

経済産業情報

風力発電の効率改善、自動車技術応用で

この記事の要約

ミュンヘン工科大学(TUM)歯車・ギヤ研究所が風力発電の効率を高める新たな技術を開発した。自動車のオートマチックトランスミッションで用いられる遊星歯車機構と、ステアリング安定化技術であるトルクベクタリング(トルク配分制御 […]

ミュンヘン工科大学(TUM)歯車・ギヤ研究所が風力発電の効率を高める新たな技術を開発した。自動車のオートマチックトランスミッションで用いられる遊星歯車機構と、ステアリング安定化技術であるトルクベクタリング(トルク配分制御)を応用したのがポイントで、風速に関わりなく一定のローター回転速度が得られるという。

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風力発電では、風車ブレードが風を受けて回ると、ブレードから伝えられた回転力で発電機が回り電力が発生する。発電機はこのとき、回転エネルギーをまず交流電流にして出力するが、電気の質をそろえるために一旦直流に変換(コンバート)してから再び電力周波数50Hzの交流電流に変換(インバート)して電力網に供給する。TUMによると、この直流/交流変換による電力ロスは約5%に上る。

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TUMのチームは「コンバートなしで済めば電力ロスがなく、その分発電効率は向上する」という観点に立ち、最初から厳密に50Hzの交流電流を作りだす技術の開発に取り組んだ。電力の周波数はローターの回転数に依存することから、伝動装置の改良に重点を絞った。

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現行の大型風力発電装置は、AT車のトランスミッションでも使われている遊星歯車機構によってブレードの回転をローターに伝える方式を採用しており、回転の安定度はかなり高い。TUMのチームは、この精度をさらに引き上げるため、電気モーターを備えた補助ギヤを重ね合わせる手法を考案。補助ギヤは状況に応じて駆動力をローターと発電機のいずれにも分配できるため、むらのない安定した回転が実現できる。同技術は自動車の分野で「トルクベクタリングシステム」として以前から実用化されている。

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