現物給与は月44ユーロを超えない限り、所得税の課税対象とならない。これは所得税法8条2項第9文に規定された決まりである。だが、これまでは現物給与の条件が厳しく制限され、同ルールの恩恵にあずかることはほとんどできなかった。税金をできる限り多く徴収したいのはどの国も税務署でも同じということである。
\この鉄の壁に最近、大きな穴が開けられた。税務問題の最高裁である連邦財政裁判所(BFH)が従来の判例を覆す判決(訴訟番号:VI R 21/09、VI R 27/09、VI R 41/10)を下したのである。
\取り扱った裁判は計3つある。具体的には(1)特定のガソリンスタンドで給油した社員に対し月30リットルを上限に会社が費用を持つこと(2)特定のガソリンスタンドのカードを社員に支給し、月44ユーロを上限に給油費用を会社が負担すること(3)誕生日を迎えた社員に特定の小売店の商品券20ユーロをプレゼントすること――が非課税の現物支給に相当するかが争われた。
\税務署側の言い分はたとえ現物であっても金銭的な価値を持つ以上は課税対象となるというもので、下級審も同様の判断を示した。これに対しBFHの裁判官は、ガソリンや商品券のように用途が制限され換金できない限りは44ユーロの非課税ルールが適用されるとの新判断を提示。係争となった3件について税務署の認識を誤りとする見解を示した。
\今回の判決を受け、従業員にこうした現物支給を行う企業が増えると予想される。給与を全額、現金で支給した場合に比べ社員の手取り給与が増えるためだ。月44ユーロ以下の現物給与には社会保険料もかからないため、間接労務費の軽減につながるという事情は追い風となる。
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