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2011/4/6

総合 - ドイツ経済ニュース

日本からの船舶を港湾当局が警戒

この記事の要約

欧州の港湾当局や企業が日本からの船舶の到来に神経をとがらせている。積荷や船舶が放射能に汚染されている可能性があるためだ。日本メーカーはこうした懸念への対応策をすでに検討ないし実施しているものの、欧州当局の検査基準は定まっ […]

欧州の港湾当局や企業が日本からの船舶の到来に神経をとがらせている。積荷や船舶が放射能に汚染されている可能性があるためだ。日本メーカーはこうした懸念への対応策をすでに検討ないし実施しているものの、欧州当局の検査基準は定まっておらず、対策を立てるにも限界がある。

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3月29日付『ファイナンシャル・タイムズ(ドイツ版、FTD)』紙は、中国のアモイ港に入港した日本の大型コンテナ船が放射能汚染を理由に陸揚げを許可されず引き返した事実を、海運会社と船舶の実名を挙げて報道した。同コンテナ船は福島原発から約120キロ離れた海域を航行したに過ぎないが、放射能が検出されたという。この報道を受け、食料品以外の日本製品に対しても警戒感が高まっている。

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放射能汚染の可能性がある日本からの船舶が欧州の港湾に到着するのは4月中旬からとなる見通しで、当局は対策を練っているところだ。蘭ロッテルダム港の港湾当局はアジアからの船舶の船長に対し最近寄港した10港湾のリストを提出させるほか、船舶が汚染されていないことを文書で確約させる。そのうえで放射能検査を実施する。

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ロッテルダム当局が4日発表したところによると、検査は入港前に実施する。あくまでも予防的な措置で、許容値を上回ることはないとの見方を示しているものの、検査方法の詳細は定まっておらず、不透明感が残る。

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独ハンブルク港湾当局は現在、税関、内務当局と緊急対策計画を協議している。許容値をどの程度に設定するかは決定していない。

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船舶検査会社Germanischer Lloydの役員はFTD紙に対し「放射能に汚染された船舶の検査方法は検査会社にも分からない」と述べ、欧州の港湾は日本からの船舶の陸揚げを許可しないとの見方を示した。巨大な船舶を隅から隅まで検査できるかを疑問視する声もある。また、ハンブルク港湾運営会社HHLAのクラウスディーター・ペータース社長は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に対し「積荷の放射能を測定するのは船舶よりも難しい」との見方を示した。

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放射能検査は航空機ではすでに実施されており、日本からの輸入品は食料品以外でもすべて空港でチェックを受けている。機材ついても独環境省が放射能の許容値を緊急省令で制定し、検査を開始した。機材表面の許容値を1平方メートル当たり1キロベクレルと定めている。実施期間は5月下旬まで。同省は「日本からの機材に現時点で具体的な危険はない」としている。

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日系自動車メーカーは自主検査

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こうした現状を受け、日本の自動車各社は欧州や米国向けの出荷前に放射能検査を実施する。独自動車専門誌『オートモビルヴォッヘ』が2日付で報じたもので、国外の消費者の間に車両の放射能汚染への懸念が高まっていることに対応する考えだ。

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マツダ独法人の広報担当者は同誌に対し、「わが社は放射能に汚染された自動車や交換部品が流通しないことを、検査を通して保証する」と明言。トヨタも「顧客の健康を害する可能性を排除できない場合は製品を一切、出荷しない」との立場を明らかにした。

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日本から部品の供給を受ける独メーカーの対応は企業によって異なる。エンジン部品大手のマーレが独自に放射能検査を実施するのに対し、変速機大手のZFは日本からの製品は空港や港湾で検査されるため、自らの手でチェックする必要はないとしている。

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一方、放射能漏れ事故を受け東京湾や横浜港への入港を見合わせてきたハパックロイドやハンブルク・ジュドなどドイツの海運会社は入港を再開した。

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ただ、放射能に汚染された水が海に流出したことを受けて新たな問題が浮上している。船舶の冷却水や飲料水に海水を利用しているため、水を通した汚染・被曝の懸念が出ているのだ。チェルノブイリ原発事故以降、船舶の放射能汚染は保険の適用外とされており、海運各社は慎重になっている。

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