炭化水素から純度の高い水素を簡単に製造する新たなシステムをフラウンホーファー太陽エネルギー研究所(ISE)が開発した。炭化水素を直接水素と炭素に分解する「熱分解」と呼ばれる手法を利用。従来の手法(水蒸気改質)で必要だった装置や原料が不要となり、装置の軽量・低コスト化を実現した。
\水素の工業製造では通常、炭化水素の水蒸気改質という手法が用いられるが、◇副産物として発生する一酸化炭素の分離・除去装置が必要◇水(水蒸気)の供給が必要――なため、システム全体の重量がかさむ難点がある。燃料電池を動力源とする自動車では車体重量の増加につながり、開発・普及の大きな障害となっていた。
\ISEはこうした事情を踏まえ、炭化水素の熱分解による水素製造法に着目。熱分解反応では触媒に炭素(コーク)が析出して触媒が失活することから、反応器2基を交互に作動させて1基が反応中にもう片方が触媒再生を行う連続触媒再生式を採用した。反応器の運転は完全に自動制御されるため、触媒の活性を維持しながら純度の高い水素を連続生成できる。
\ISEによると、生成した水素ガスに含まれる一酸化炭素は1%(体積パーセント)未満と低く、固体高分子型(PEM)燃料電池と固体酸化物型(SOFC)燃料電池に一酸化炭素のろ過なしでそのまま供給できる。また、高温ポリマー電解膜質型(HTPEM)燃料電池に供給した実験では、純水素に比べ大きな違いは認められなかった。
\同システムの開発で最大の難関となったのは触媒だ。熱分解用触媒には従来、主に高価な貴金属が使用されてきたが、これに代わる安価な触媒の探索は容易でなく、試行錯誤の連続だったという。
\ISEは同技術をハノーバー国際産業技術見本市(ハノーバーメッセ)で紹介している。
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