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2011/5/18

総合 - ドイツ経済ニュース

経済危機前の税収水準をほぼ回復、好景気が追い風に

この記事の要約

ドイツの税収が今後、急速に拡大する見通しだ。景気回復の足取りが速いためで、税収見積もり委員会は12日、地方と欧州連合(EU)を含む同国の2011年の税収総額が昨年11月の予測を176億ユーロ上回るとの見方を発表した。来年 […]

ドイツの税収が今後、急速に拡大する見通しだ。景気回復の足取りが速いためで、税収見積もり委員会は12日、地方と欧州連合(EU)を含む同国の2011年の税収総額が昨年11月の予測を176億ユーロ上回るとの見方を発表した。来年からは税収総額の記録更新が続き、2015年には2010年実績を23%上回る6,523億ユーロへと達するとみている。

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ドイツの税収は2008年に記録した5,610億ユーロが過去最高。翌09年は金融・経済危機の影響で5,240億ユーロへと大きく落ち込んだ。昨年は5,306億ユーロまで回復したものの、増加幅は1.3%にとどまっている。

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税収見積もり委によりと、今年は前年比4.6%増の5,550億ユーロに拡大し、08年水準までほぼ回復。来年には同5.3%増の5,846億ユーロに達し、過去最高を大きく更新する。その後も2015年まで年3~4%台の成長が続く。

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税収が最も大きく伸びるのは法人税だ。景気回復を受けて企業の利益が急速に増加しているためで、2015年には2010年の120億ユーロから2倍の243億ユーロに拡大する。市町村の主な財源である営業税もこの間37%増えて489億ユーロに達する。

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ドイツの税収の6割を占める付加価値税と賃金税も大きく伸びる見通しで、付加価値税は1,800億ユーロから2,079億ユーロ、賃金税は1,279億ユーロから1,659億ユーロへと拡大する。

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今回の予測は2011年の国内総生産(GDP)成長率を実質2.6%、12年を同1.8%、13年以降を年1.6%と仮定したうえで作成した。連邦統計局が13日に発表した2011年第1四半期のGDP成長率は前期比で実質1.5%に達し、政府予想の0.8%を大きく上回っており、少なくとも11年の税収は税収見積もり委の予測を超える公算が高い。

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税収が予想を上回るスピードで拡大する見通しを受け、経済界や政治家の一部からは減税や補助金拡大を求める声が出てきた。独化学工業会(VCI)は連立与党が政権協定で取り決めた研究開発費の税控除の履行を要求。少数与党・キリスト教社会同盟(CSU)は手付かずとなっている中間層と富裕層の税負担軽減を打ち出した。

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ただ、ドイツは09年の憲法(基本法)改正で、新規債務の対国内総生産(GDP)比率を2016年以降、最大0.35%に抑えるルールを導入しており、財政面でのゆとりは小さい。原発廃止の前倒し政策や連邦軍改革に伴うコスト増が予想されることもあり、ショイブレ財務相は財政再建路線を堅持する意向だ。野党の社会民主党(SPD)も税収増を財政赤字の圧縮に充てるよう要求しており、財政規律が緩む可能性は低い。

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