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2011/7/6

ゲシェフトフューラーの豆知識

責任能力なくても即時解雇可

この記事の要約

責任無能力のない心神喪失者は刑事責任を問われない。自分の行為に責任を持てないため責任を問いようがないわけである。では、職場にそうした人物がおり、問題行動や発言を行った場合、同僚や上司はただ耐え忍ぶしかすべがないのだろうか […]

責任無能力のない心神喪失者は刑事責任を問われない。自分の行為に責任を持てないため責任を問いようがないわけである。では、職場にそうした人物がおり、問題行動や発言を行った場合、同僚や上司はただ耐え忍ぶしかすべがないのだろうか。ここではシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所が6月9日に下した判決(訴訟番号: 5 Sa 509/10)に即してこの問題をお伝えする。

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裁判を起こしたのは自動車部品メーカーに勤務していた52歳の男性。同男性は離婚後の2008年半ば、精神科で治療を受け、同年末から09年半ばにかけては就労不能で欠勤した。復職後、女性社員に対し卑猥な発言を繰り返したため、雇用主は2010年2月8日に原告に警告。2日後の10日にも上司を含む女性に向かって暴言を吐いたため、再び警告処分とした。

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原告はさらに25日の昼休み、同僚が多数いる前で◇上司の女性が取引先の男性と一夜を過ごした◇彼女はその男性がエイズに感染していることを知っていた――などと発言した。これを受け、誹謗された上司と男性は名誉棄損で原告男性を告訴。雇用主も即時解雇を通告した。

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原告は即時解雇を不当として提訴。提訴後の4~5月にかけて入院治療を受け、裁判では、この入院でそううつ病であることが確認されたため、2月25日の行為に対する責任能力はないと主張。解雇無効を訴えた。

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第1審は原告の訴えを棄却、第2審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労裁も第1審の判断を支持した。判決理由で裁判官は、原告は性的で侮辱的な発言を繰り返したことで職場の雰囲気を著しく損なったと指摘。こうしたケースでは責任能力が全くなかったとしても即時解雇できると言い渡した。

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