キャッシュカード偽造やスキミングによる被害の増加を受けて、ドイツの大手銀行の一部が欧州域外でのカード利用に制限を設け出した。リテール最大手のポストバンクはデビットカードをMaestroからVisa Europeの「V-Pay」に切り替え、欧州外での現金引き出しとカード払いができないようにした。信用協同組合連合会(BVR)系の銀行も一部の顧客を対象にV-Payカードを発行している。5日付『ファイナンシャル・タイムズ(ドイツ版、FTD)』紙が報じた。
\Visa Europeの開発したV-PayはICチップ搭載のキャッシュカードで、同社によるとチップに記録されたデータのコピーが不可能なため、安全性が極めて高い。ただ、利用できる地域が欧州の47カ国・地域に限定されているうえ、ICチップ未対応の現金自動預け払い機(ATM)や読み取り機しか設置していない店では使えないという難点がある。『ハンブルガー・アーベントブラット』紙によると、スペインやポルトガル、トルコでは対応端末の普及が比較的進んでいるものの、オーストリア、ノルウェー、デンマークなどではカードを利用できない可能性が高い。このためポストバンクは国外旅行の際にはクレジットカードやトラベラーズチェックを持参するよう勧めている。
\V-Payとは異なる方法で制限を敷いているのは最大手のドイツ銀行だ。同行では欧州域外でのキャッシュカード引き出し限度額をゼロに初期設定し、顧客が自分で利用制限解除の手続きをとらない限りATM機などを利用できないようシステムを変更した。旅行先で初めてカードが使えないことに気付いた顧客やあらかじめ設定した以上の現金が必要になった顧客はホットラインに電話することで変更手続きができる。
\貯蓄銀行グループでは現在のところ、ごく一部がV-Payを導入するにとどまるが、FTD紙によると来年をめどにドイツ銀の方式を採用する方針という。
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