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2011/7/13

ゲシェフトフューラーの豆知識

依存症の職員、解雇の前に治療のチャンス提供を

この記事の要約

アルコール依存症の被用者に改善の見通しが立たない場合、雇用主は解雇を通告できる。しかし改善の見通しが立たないとは具体的にどういうケースが該当するのだろうか。ここではラインラント・ファルツ州労働裁判所が2月に下した判決(訴 […]

アルコール依存症の被用者に改善の見通しが立たない場合、雇用主は解雇を通告できる。しかし改善の見通しが立たないとは具体的にどういうケースが該当するのだろうか。ここではラインラント・ファルツ州労働裁判所が2月に下した判決(訴訟番号:10 Sa 419/10)に即してこの問題をお伝えする。

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裁判を起こしたのは公立病院に勤務する女性職員。同職員は2006年に酩酊状態で転倒し、同年は183日、翌年も32日、翌々年は54日、病欠した。雇用主は原告職員がアルコール依存症ではないかと考え、08年10月8日の面接で質問したところ、本人はその事実を認め、15日から週に一度、通院治療を受けるようになった。

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09年3月6日に開かれた職員パーティで酒を飲み、翌営業日の9日から再び病休を取得したため、雇用主は事業所委員会の承認を得て16日に即時解雇を通告した。原告はその取り消しを求めて提訴した。

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第1審のカイザースラオターン労働裁判所ピルマーゼンス支部は原告勝訴を言い渡し、第2審のラインラント・ファルツ州労裁も同判決を支持した。判決理由で裁判官は、病状改善の見通しが立たず、雇用の継続が雇用主の利害に著しく反する場合は解雇が認められるとした最高裁判決を指摘。そのうえで、被告病院はアルコール依存症が再発した原告に対し入院治療のチャンスを与えるべきだったとして、そうした機会を与えずに行った解雇は無効だと言い渡した。解雇できるのは治療のチャンスを提供したにも関わらず依存症の被用者が拒否した場合に限られるとしている。

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最高裁の連邦労働裁判所(BAG)は1999年の判決(訴訟番号:2 AZR 123/99)で、依存症が再発した場合でも雇用主はまずは被用者に対し治療のチャンスを与えなければならないとの判断を示している。

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