雇用主がクリスマス手当を支給しなければならないのは雇用者団体と組合が結んだ労使協定(Tarifvertrag)、ないし雇用主が事業所委員会と結んだ社内協定(Betriebsvereinbarung)もしくは労働契約に取り決めがある場合に限られる。これとは別に雇用主が任意で支給することもある。この場合、毎年支給を続けていると被用者に受給を期待する権利が発生し、支給は義務と化す(本誌2010年2月24日号、2010年12月15日号を参照)。
\ところで、任意の手当ては病気で長期間欠勤した社員にも支給しなければならないのだろうか。ここではラインラント・ファルツ州労働裁判所が2月に下した判決(訴訟番号:10 Sa 495/10)に即してこの問題をお伝えする。
\裁判を起こしたのはフランチャイズチェーンの加盟店で働いていた50歳の女性。同社では毎年11月、業界の労使協定で定められた額に雇用主が任意支給分を上乗せしてクリスマス手当てを支給している。
\原告は2009年8月26日~2010年10月3日の期間、継続的に病欠。09年の病欠日数は計89日に達した。このため同年のクリスマス手当は労使協定に基づく額(568ユーロ)が支給されたのみで、任意支給分(1,418ユーロ)は全額カットされた。原告はこれを不服として提訴、任意額も支給するよう要求した。
\裁判では第1審のコブレンツ労働裁判所が原告の訴えを棄却、第2審のラインラント・ファルツ州労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官は、任意の特別手当は「病欠時の賃金支給義務(Lohnfortzahlung im Krankheitsfall)」と異なり法律で支給が義務づけられていないと指摘。雇用主は自らの判断で長期間病欠した社員への支給額を全額ないし部分的に削減できると言い渡した。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めていない。
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