「あいつは仕事ができない」と上司や同僚が思う社員はどの会社にも大抵はいるだろう。だが、能力の低さを理由に解雇するとなると、客観的な根拠が必要になる。ここではミュンヘン州労働裁判所が3月に下した判決(訴訟番号: 3 Sa 764/10)に即してこの問題をお伝えする。
\裁判を起こしたのは流通系の企業で荷物と郵便物の配送管理業務を担当していた女性社員。同社員はデータ入力ミスなどが相次ぎ、警告処分を受けていたが、改善しなかったため、雇用主は2009年7月6日付の文書で、予告期間付の通常解雇を通告した。これに対し原告は、他の職員も同様の過ちを犯しているなどと主張。解雇無効を求めて提訴した。
\裁判では第1審のアウグスブルク労働裁判所が原告勝訴を言い渡し、第2審のミュンヘン労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官は、解雇が可能なのは同じような業務を行う職員集団のエラー率平均を長期にわたって大幅に上回ることが客観的なデータで裏付けられる場合に限られると指摘。被告企業はそうしたデータを記録しておらず、解雇は無効だと言い渡した。
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