短鎖の鎖式飽和炭化水素(アルカン)同士を重合させてより長鎖(高分子)のアルカンを合成する新たな技術を、ミュンスター大学を中心とする研究チームが開発した。ナノ細孔構造の金触媒にアルカンを導入して分子鎖を拘束し、端の部分だけで反応が起こるように制御することで鎖同士をつなげるという手法で、従来の手法に比べエネルギーや手間を大きく軽減できるという。
\アルカンはメタン系炭化水素とも呼ばれ、身近な物質としてはメタンやエタン、オクタン、パラフィンなどが挙げられる。結合は全て単結合で、分子的に安定しているため反応性が低い。反応を引き起こすためには非常な高温や手間のかかる作業が必要なため、重合法の開発はこれまでほとんど進んでいなかった。だが、安価でありふれたアルカンを重合させて工業的に付加価値の高い有機化合物に変換することの意義は大きく、新たな技術や触媒の探索に向けた研究が始まっている。
\ミュンスター大学とナノテクノロジーセンター(CeNTech)の研究チームは、金ナノチャンネルの触媒を作成した。チャンネルの開口径は1.22ナノメートルとアルカンの分子鎖が辛うじて導入できるほどの大きさだ。
\触媒との相互作用でアルカン分子の炭素水素結合の開裂(C-H活性化)が引き起こされるが、鎖の内側部分の分子は狭いナノ空間に閉じ込められて身動きが取れないため、反応がおこる位置は鎖端のCH3分子か端から2番目のCH2分子に限られる。これによって隣り合う分子鎖同士が重合し長い分子鎖が形成される。同手法では分子鎖や触媒表面に不純物が付着することを防ぐため超高度真空状態にする必要があるものの、重合反応時の温度は420~470ケルビンと中間温度帯だった。
\研究の成果は『Science』に掲載された。
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