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2012/5/2

経済産業情報

既存の送電線で直流高圧送電、5~7年後にも実用化へ

この記事の要約

高圧送電網管理・運営を手がけるAmprionとTransnetBW(3月にEnBW Transportnetzeから改称)は4月24日、既存の送電網を使って直流高圧送電(HVDC)方式による送電を行う新たな技術を開発した […]

高圧送電網管理・運営を手がけるAmprionとTransnetBW(3月にEnBW Transportnetzeから改称)は4月24日、既存の送電網を使って直流高圧送電(HVDC)方式による送電を行う新たな技術を開発したと発表した。ドルトムント工科大学高電圧工学講座と共同で開発したもので、従来の交流送電線を直流送電線としても利用できるようになる。チームは5~7年後をメドに実用化を目指す。

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HVDC方式による送電実用化を目指す背景には、原発廃止や再生可能電力の利用拡大に伴う電力供給体制の変化がある。再可エネ電力の中心をなす風力発電は主に独北部の北海・バルト海上で行われるが、電力消費地である南部と結ぶ高圧送電インフラは整備が不十分で、電力供給にすでに困難が生じている。このため、インフラ整備に加えて送電容量の拡大、送電効率の改善は大きな課題だ。HVDCは発電・送電時の損失が非常に少なく、大量の電力の長距離送電に適している。

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新規に送電線を建設することは通過予定地の住民の反対を受けやすいため、既存の送電インフラをそのまま活用することが実現の早道となる。ただ、現在の発電・送電では変圧(制御)のしやすさや安全上の理由から交流送電が採用されており、同方式に適合したインフラをそのまま直流送電に使用すると放電など制御不能の事態に陥りかねない。

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Amprionなどの産学研究チームはこうした事情を踏まえ、長距離輸送の部分では直流方式で送電し、地域の送電網に分散する箇所で変電・変圧を行う方式を開発した。変電・変圧設備の設置コストは3億ユーロと高いものの、新規に送電網を建設するよりは大幅に低いとしている。現在は商業利用していない2.4キロメートルの送電線で試験を行ったところ、放電やイオン流帯電、磁場などの発生なく安全に送電できることが確認された。

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