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2012/5/2

経済産業情報

磁石の回転で生体内発電が可能に

この記事の要約

体内埋め込み型医療機器に外部から非接触で充電する新たな手法をフラウンホーファーセラミック技術・システム研究所(IKTS)が開発した。磁気カップリングと呼ばれる現象を利用し、体内に埋め込まれたジェネレーターに磁力で回転動力 […]

体内埋め込み型医療機器に外部から非接触で充電する新たな手法をフラウンホーファーセラミック技術・システム研究所(IKTS)が開発した。磁気カップリングと呼ばれる現象を利用し、体内に埋め込まれたジェネレーターに磁力で回転動力を伝えて発電させるのがポイント(特許取得済み)。磁力を使うため生体への影響や医療機器内の電子回路が誤動作する心配もないという。

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心臓ペースメーカーをはじめとする体内埋め込み型医療機器は電池が消耗するため、5~10年ごとに装置を交換(=外科手術)する必要があり、患者の大きな負担となっている。このため、機器に二次電池を搭載して外部から非接触で充電するシステムへの関心が高まっている。

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すでに電波方式(電流を電磁波に変換し、アンテナを介して送受電)、電磁誘導式などが開発・実用化されているが、主流の電磁誘導式では給電側と受電側の位置合わせに精度が必要で、位置がずれたり両者が密着していないと充電効率が大きく低下する難点がある。また、電磁波を用いるため生体への影響も懸念されている。

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IKTSのチームはこうした事情を踏まえ、◇電磁波を用いない◇デバイス同士を密着させず、ある程度距離を離しても給電が可能◇位置合わせなどの調整が不要で簡単に使用できる――新たな技術を模索。磁力によって非接触で動力伝達を行う磁気カップリングに注目した。

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チームが開発したシステムは◇送信側(体外)のモジュールに組み込んだ永久磁石ローターをECモーターで回転させる◇体内側のジェネレーターモジュールに組み込まれた球形磁石が、外側のローターの回転で発生した磁場に同期して回転し、電力を供給する――仕組み。体外のローターとジェネレーターモジュール間は50センチメートルまで離せるため、生体深部の医療機器にも充電できる。また、送信側モジュールのサイズは電卓程度と小さく、患者がベルトなどで装着すれば簡単に持ち歩くことができる。

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IKTSは試作モデルを、4月に開催されたハノーバー国際産業技術見本市で紹介した。

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