欧州債務危機対策としてユーロ加盟17カ国が取り決めた「欧州安定メカニズム(ESM)」の合意内容をドイツ政府が連邦議会(下院)にすみやかに報告しなかったのは憲法(基本法)に違反するとして環境政党・緑の党が提訴していた係争で、連邦憲法裁判所(BVerfG)は19日、原告勝訴の判決を下した。判決理由で裁判官は、欧州連合(EU)レベルの事案を包括的かつ可能な限り早い時点で連邦議会と連邦参議院(上院)に報告することを政府に義務づけた基本法23条2項の規定を指摘。政府はこのルールに抵触したとの判断を示した。
\ESMは財政危機に陥ったユーロ加盟国を支援する常設機関で、加盟国はその概要について2011年2月の財務相会合で大筋合意。3月の首脳会談で正式合意した。
\だが、ドイツ政府が合意内容を議会に通知したのは5月になってからで周辺諸国よりも遅く、緑の党はオーストリアの姉妹政党から文書を入手。政府を基本法違反で提訴した。
\これに対し政府は、ESM条約はEU全体の事案でなく個々の主権国家が締結した国際条約であるため、議会への早期通知義務はないと主張。また、早い時点で議会に報告すると交渉中の内容が外部にもれる恐れがあるとして、5月になって議会に通知したのは正当だと反論していた。
\アンドレアス・フォスクーレ裁判長は、議会には政府の意思形成に早い時点で働きかける可能性が与えられなければならないと指摘したうえで、政府はESMの大筋合意が成立した11年2月の時点で議会に報告する義務があったとの判断を示した。
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