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2012/6/20

ゲシェフトフューラーの豆知識

雇用契約解除の予告期間18カ月は違法か

この記事の要約

民法典(BGB)622条には雇用契約解除の予告期間が定められている。それによると、被用者の側から解約する場合は、契約解除日が月末か15日のどちらかとなり、それぞれその4週間前までに雇用主に通告しなければならない(同条1項 […]

民法典(BGB)622条には雇用契約解除の予告期間が定められている。それによると、被用者の側から解約する場合は、契約解除日が月末か15日のどちらかとなり、それぞれその4週間前までに雇用主に通告しなければならない(同条1項)。雇用主の側から解約する場合(解雇)は勤続年数が長いほど、予告期間が長くなり、勤続20年以上では7カ月に達する(同2項)。

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一方、雇用主と被用者は法律の定めよりも長い予告期間を雇用契約で取り決めることができる。ただ、予告期間が長すぎると被用者の転職の障害となりやすい。では長さの法的な上限というものはあるのだろうか。この問題に関する係争でハイルブロン労働裁判所が5月に判決(訴訟番号:5 Ca 307/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは大手スーパーの調達担当主任。同主任は2011年8月に契約解除を通告した。雇用主はこれを受けて原告の勤務を免除。それとともに雇用契約に従って契約解除日を18カ月先の2013年2月末とすると通知した。

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原告はこれが憲法(基本法)12条1項で保障された「職業選択の自由」の侵害に当たるとして提訴した。

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第1審のハイルブロン労裁は原告の訴えを棄却した。判決理由で裁判官は、BGB622条では雇用契約解除の予告期間の下限は定められているが、上限は定められていないと指摘した。また、原告は被告企業が取引先企業と取り決めた調達条件をすべて把握しており、競合企業に転職すると企業間の公正な競争が阻害されるとも指摘。18カ月という長い解雇予告期間を設定したことは信義義務を定めたBGB307条に違反しないとの判断を示した。

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