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2012/8/1

ゲシェフトフューラーの豆知識

国外公館職員が起こした労働訴訟、主権を盾に拒否は可能か

この記事の要約

国外公館で働く一般職員が現地で労働訴訟を起こした場合、提訴された国家は主権を盾に裁判そのものを否認できるだろうか。この問題をめぐる係争で欧州司法裁判所(ECJ)が7月19日に判断を示したので、ここで取り上げてみる(訴訟番 […]

国外公館で働く一般職員が現地で労働訴訟を起こした場合、提訴された国家は主権を盾に裁判そのものを否認できるだろうか。この問題をめぐる係争で欧州司法裁判所(ECJ)が7月19日に判断を示したので、ここで取り上げてみる(訴訟番号:C-154/11)。

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裁判を起こしたのはベルリンにあるアルジェリア大使館に運転手として勤務していた、ドイツとアルジェリアの国籍を持つ職員マハムディアさん。同大使館から通告された解雇を不当としてその取り消しなどを求める訴訟を2007年8月にベルリン労働裁判所に起こした。

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これに対しアルジェリア政府は、他国の司法権は自国に及ばないとした国際法の取り決めを根拠に、この問題でドイツに裁判権はないと主張。また原告との労働契約には労使係争の管轄国をアルジェリアに限定すると定めた条項があるとして、ドイツでの裁判を拒否した。

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ベルリン労裁は原告の訴えを棄却した。一方、第2審のベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所は欧州連合(EU)法に関わる問題だとして、ECJの判断を仰いだ。

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ECJが下した判決は、同係争の管轄権はドイツにあるというものだった。判決理由で裁判官は、他国の裁判権が及ばないのは自国の主権に関わる問題に限られると指摘。原告は運転手として雇用されており、アルジェリアの主権とは何ら関係がないとの判断を示した。

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また、裁判管轄国をアルジェリア制限した労働契約の条項については、雇用主に比べて立場の弱い被用者の保護を目的とするEU規則44/2001の規定を根拠に無効だとの判断を示した。

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