労働契約の規定が不明確だと雇用主は裁判で痛い目をみることになる。ここでは最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が5月に下した判決(訴訟番号:5 AZR 347/11)に即してこの問題をお伝えする。
\裁判を起こしたのは2008年4月14日~09年4月13日の1年間、有期契約社員として被告企業に勤務していたトラックの運転手。労働契約書には◇月給は残業代込みで1,100ユーロとする◇勤務時間は就労規則に基づく――と記載されていた。
\原告は退職後の09年9月23日になって、計978.5時間の残業を行ったとして、残業手当6,213.50ユーロに金利を加えた額の支払いを請求する訴訟を起こした。
\第1審と第2審は原告の訴えを棄却したものの、最終審のBAGは下級審判決を破棄しザクセン州労働裁判所に差し戻した。判決理由で裁判官は、定義が不明確で理解不能な契約規定を無効とした民法典(BGB)307条1項の規定を指摘。原告と被告の労働契約には勤務時間が明記されておらず不明確だとして、原告には残業手当の請求権があるとの判断を示した。ザクセン州労裁に対しては、原告の残業時間を正確に算定したうえで判決を下すよう命じた。
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