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2012/9/12

総合 - ドイツ経済ニュース

再可エネ電力の助成負担に不公正感、内需型企業にも軽減措置適用で

この記事の要約

再生可能エネルギーの拡充に伴って上昇する電力コストの負担配分が大きな問題として浮上している。激しい国際競争にさらされる企業については負担を軽減することに異論がないものの、そうでない企業も軽減措置の適用を受けているためだ。 […]

再生可能エネルギーの拡充に伴って上昇する電力コストの負担配分が大きな問題として浮上している。激しい国際競争にさらされる企業については負担を軽減することに異論がないものの、そうでない企業も軽減措置の適用を受けているためだ。そうした措置を受ける企業が増えるほど、その恩恵に与れない一般消費者と企業の負担は重くなることから、野党は助成のあり方を見直すよう要求している。

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デュッセルドルフ近郊のノイスにノルウェー企業ノルスク・ハイドロのアルミ精錬工場がある。同社は3年前の2009年、アルミ価格の急落と電力価格の上昇を受けて同工場の閉鎖を検討。最終的に閉鎖を見合わせたものの、大幅な減産に踏み切り、現在に至るまで操短を続けている。

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その同社が4日、ノイス工場の生産規模を来年1月から現在の3倍の年15万トンに引き上げる意向を表明し、注目を集めている。再可エネの拡充政策を受け、ドイツの電力料金は上昇が続くと予想されるためだ。

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ノルスク・ハイドロがドイツでの増産を決めたのには大きく分けて3つの理由がある。

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1つはオーストラリアにある精錬工場の閉鎖。これは同国の炭素税導入と豪ドルレートの上昇を受けた措置で、同社は豪工場を閉鎖してドイツでの生産を増やした方が得策と判断した。

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2つ目は電力取引所での取引価格が低下していることだ。背景には景気減速のほか、再可エネ優遇策を受けてグリーン電力の供給が増えていることがあり、ライプチヒの欧州エネルギー取引所(EEX)における2013年向け電力先物価格はピーク時の1メガワット時当たり90ユーロ超(08年3月)から現在は50ユーロへと低下している。生産コストの半分を電力が占めるアルミメーカーにとってこの効果は大きい。取引所価格の下落は一般の消費者などにもプラスに働くものの、再可エネの助成金負担が増えているため効果が打ち消されている。

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来年から欧州連合(EU)排出量取引制度(EU-ETS)の第3期が始まることを受けて、鉄鋼、アルミ、化学などエネルギー集約型企業のコスト負担軽減策が実施されることもノイス工場増産の追い風となった。同社のオリバー・ベル取締役は記者会見で、「政治が適切な枠組み条件を作り出せば、ドイツはエネルギー集約型産業を維持できる」と明言した。

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再可エネ電力助成金、軽減措置申請が急増

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ノルスク・ハイドロのケースはエネルギー集約型企業を国内にとどめるには負担軽減策が必要なことを示している。だが、ドイツではエネルギーの使用量がそれほど多くない企業でも昨年から負担軽減措置を申請できるようになり、負担軽減のあり方に疑問が投げかけられている。

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問題となっているのは電力価格に上乗せされる再可エネ電力助成金の軽減措置。これまでは年間電力消費量が10ギガワット時以上の企業でないと同措置を受けられなかったが、政府は法改正で適用対象の下限を1ギガワット時へと引き下げた。

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これを受け、軽減措置を申請する企業の数は急増している。野党・緑の党の質問に対する政府回答をもとに『南ドイツ新聞』が報じたところによると、今年の申請件数は期限日の6月末までに2,023件を記録。2006年(約400件)の5倍に膨らんだ。

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軽減措置の受け手のなかには地域交通事業者やミネラルウォターメーカーなど国際的な経済競争にさらされていない企業も目立つ。エネルギー集約型産業であれば国外移転防止や産業基盤・国内雇用の維持を根拠に助成措置を正当化できるものの、そうした恐れの低いこれらの内需型企業にも適用することは理解を得難い。

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軽減措置を受けられない一般消費者と企業は消費電力1キロワット時当たり現在3.59セントを負担しているうえ、来年からは同5.3セントに上昇する公算が高い。現行制度が続けば負担額は再来年以降も増加が避けられない見通しのため、不公平感は強まりそうだ。

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