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2012/9/26

総合 - ドイツ経済ニュース

貧富の差が拡大、10%の富裕層が個人資産の半分以上を所有

この記事の要約

貧富の差や貧困層の拡大を示すレポートなどが最近ドイツで、相次いで公表・報道されている。富裕層は資産を一貫して増やし続けているのに対し、低賃金層の割合は上昇。連邦労働省は、所得の二極化は市民の公正感を損ない社会の一体性を危 […]

貧富の差や貧困層の拡大を示すレポートなどが最近ドイツで、相次いで公表・報道されている。富裕層は資産を一貫して増やし続けているのに対し、低賃金層の割合は上昇。連邦労働省は、所得の二極化は市民の公正感を損ない社会の一体性を危うくするとして警鐘を鳴らした。野党や労働組合の間からは富裕層の所得税率引き上げや資産税の復活を求める声が出ている。

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労働省はこのほど、最新版『貧困・富裕レポート』の原案を作成した。同レポートは4年に1度編纂されており、今回で4回目。今後、他の省庁との調整を経て11月14日の閣議で承認される。

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同原案をもとに各種メディアが報じたところによると、現金、有価証券、不動産などの純個人資産総額は1992年初頭の4兆7,000億ユーロから2009年初頭には約2倍の9兆3,000億ユーロへと拡大した。07年から12年の間にはさらに1兆4,000億ユーロ増えており、ドイツが全体として豊かになっていることが分かる。

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だが、資産の分布状況に目を向けると、富裕層への集中は一貫して強まっている。個人資産全体に占める最も富裕な10%の世帯の割合は98年が45%だったのに対し、03年は49%、08年は53%へと達した。一方、資産規模で下位50%に入る世帯では同比率が98年の4%から08年には1%へと大きく低下している(グラフを参照)。

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貧富の差は所得面にも反映されている。同原案は高額給与取得層でインフレを加味した実質収入が増えたのに対し、フルタイム就労者の下位40%の層では減少したとしている。

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時給10.36ユーロ未満は低賃金

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低賃金層(時給が国内中央値の3分の2未満の被用者)が増加傾向にあることは連邦統計局が10日に発表した統計で分かった。それによると、就労者に占める低賃金層の割合は06年の18.7%から10年には20.6%へと拡大した。10年では時給10.36ユーロ未満が低賃金に該当する。

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低賃金就労者はパートタイムやミニジョブ就労者(税金・社会保険料納付義務が免除される月収400ユーロ以下の被用者)、有期契約社員などの非正規就労者が多く、10年には同就労者の49.8%が低賃金層に該当した。

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非正規就労者は正規就労者に比べて一般的に賃金が低く、その数の増加は低賃金層の増加につながる。

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06年に始まったドイツ経済の上昇基調はリーマンショックで一時途絶えたものの、その後回復し、現在も続いている。それにも関わらず低賃金層が増えているのは、労働市場の規制緩和と景気拡大を受けて熟練技能を持たない長期失業者の一部が労働市場に足がかりを得たからだ。労働省はレポート原案で、非正規雇用の増加は正規雇用の減少をもたらしていないと指摘している。

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ただ、フルタイムで働いても生活に必要な収入を稼げない就労者がいることは問題だとも認識しており、フォンデア・ライエン労働相はこうした現状の是正に意欲を示した。最低賃金制度の拡充などを念頭に置いている。

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