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2012/10/24

ゲシェフトフューラーの豆知識

組織再編に伴う解雇、ハードル高し

この記事の要約

収益力を強化するために組織再編を行う際、企業はしばしば整理解雇を行う。組織のあり方を変えることで事業効率が上がるためだ。だが、ドイツでは解雇がなぜ必要かを従業員一人一人について具体的に説明できないと、裁判で不当な措置と見 […]

収益力を強化するために組織再編を行う際、企業はしばしば整理解雇を行う。組織のあり方を変えることで事業効率が上がるためだ。だが、ドイツでは解雇がなぜ必要かを従業員一人一人について具体的に説明できないと、裁判で不当な措置と見なされ無効とされるため、注意が必要だ。ここでは最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が5月に下した判決(訴訟番号:2 AZR 124/11)に即してこの問題を取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは米化学大手の独法人で工場長を務めていた管理職(月収およそ1万ユーロ)。同法人は世界規模で行うグループの組織再編の一環で、ドイツに3つあった生産拠点の統廃合を決定した。これに伴い原告工場長を2010年4月30日付で整理解雇する旨を09年9月24日付の文書で通告。原告はこれを不当として提訴した。

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被告の独法人はこれに対し、(1)原告がこれまで行ってきた業務の半分はこれまでグループの別会社の社長を務めてきたK氏が引き継ぎ、残り半分も原告の部下7人が引き継ぐ(2)原告がこれまで勤務してきた工場に新設する事業の統括責任職を原告が遂行することは、その職能や職歴から判断して不可能だ――と指摘。原告を解雇するのは組織再編の結果、投入する業務がなくなったからであり、解雇は妥当だと反論した。

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原告は第1審と第2審で勝訴、最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由で裁判官は、整理解雇を名目とする不当解雇でないことを証明するために、被告には組織再編のどの措置が原告の業務の減少・消滅どの程度つながったかを具体的に説明する義務があると指摘。被告の説明は十分でなく、解雇保護法(KSchG)1条2項第1文で禁じされた、緊急性のない不当な整理解雇だと言い渡した。

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具体的には原告の業務の半分を部下7人に引き継がせるとした被告の説明を問題視。部下7人が原告の業務を引き継げば1人当たりの勤務時間が最大1時間増え、残業なしでは業務をこなせなくなるとの判断を示した。社員の解雇に伴い他の社員が残業を余儀なくされる場合、解雇は無効との判例がすでに確定している。

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