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2012/10/31

経済産業情報

プラズマのエネルギーと流れ、個別制御に成功

この記事の要約

産業プラズマとして一般的に用いられている容量結合型プラズマ(CCP)において、イオンエネルギーとイオン衝突頻度という密接な関連性を持つ2つのパラメーターを別々に制御する新たな技法を、ルール・ボーフム大学(RUB)のウヴェ […]

産業プラズマとして一般的に用いられている容量結合型プラズマ(CCP)において、イオンエネルギーとイオン衝突頻度という密接な関連性を持つ2つのパラメーターを別々に制御する新たな技法を、ルール・ボーフム大学(RUB)のウヴェ・ツァルネツキー教授を中心とする研究チームが開発した。プラズマ用高周波電源で、基本波と高調波を混合した合成波を使用することがポイントで、この電流によって引き起こされる電場のアンバランスとそれを補償する現象を利用することで制御できるという。

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高周波プラズマを用いた表面改質では、イオンの流れ(基板への衝突回数)が多いほど薄膜形成のペースが速まるため、生産効率が上がる。一方、イオンの流れが多くなるとイオンが基板に衝突するエネルギーも高まってしまう。エネルギーが高くなると薄膜は不均一になり、最悪の場合、基板の表面を破壊してしまう。電流の周波数や振幅(強さ)を変えることでイオン流とエネルギーは制御できるものの、それぞれを別個に変更することはできず「ラジオの番組(周波数)とボリュームを1つのつまみで調整するようなもの」という。

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RUBの研究チームは試行錯誤の末、ベースになる電流(基本波。ここでは13.56MHz)の振幅や周波数を「変更」するのではなく、基本波と高調波をミックスした合成波を使うアイデアにたどり着いた。

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複雑な波形の電流によって正極・負極へのイオンの流れの均衡が崩れる結果、プラズマ中の交流電場に直流電場が発生してバランスを取り戻そうとする「自己バイアス」という補償現象が起こる。強くて継続的な直流電場はイオンを一方の電極に加速させる作用を持つため、引き寄せられたイオンのエネルギーを高める一方で、引き寄せられなかったイオンのエネルギーを下げる効果がある。

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※高調波=ひずみ波交流の中に含まれている、基本波の整数倍の周波数をもつ正弦波。2倍の周波数=27.12MHz、3倍の周波数=40.69MHzなど

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