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2012/10/31

経済産業情報

ドイツの労使モデル、自動車産業で雇用の支えに

この記事の要約

ベルギーや英国、フランス、イタリアで自動車工場の閉鎖や従業員の大規模削減が相次ぐなか、労働コストが高く本来ならば削減対象の筆頭候補となるはずのドイツがリストラの波を免れている。金属労組IGメタルの力が強いことが大きい。雇 […]

ベルギーや英国、フランス、イタリアで自動車工場の閉鎖や従業員の大規模削減が相次ぐなか、労働コストが高く本来ならば削減対象の筆頭候補となるはずのドイツがリストラの波を免れている。金属労組IGメタルの力が強いことが大きい。雇用者側も労組との円滑な関係を重視しており、独自動車業界の雇用は将来的に拡大すると業界関係者はみている。10月26日付『ファイナンシャル・タイムズ(ドイツ版、FTD)』紙が報じた。

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IGメタルの広報担当者は、「ドイツの被用者は非常に力が強く、不利な要求を阻止したり先延ばしさせることができる。工場閉鎖や人員削減などの要求を雇用者側が貫徹することは極めて難しい」と指摘する。

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米ゼネラルモーターズやフォードは先の金融・経済危機に際して、本国の工場を10カ所以上閉鎖したが、ドイツでは◇労使の共同決定権◇事業拠点の長期存続を保障する労使協定◇事態が深刻化した際の政府介入――など同国特有の制度がハードルとなり、米国のように簡単にことを進められない。独拠点の元役員は「労組と戦っても、勝ち取れるものなど何もない」と明言する。

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一方、ベルギーや英国などでは自動車業界に複数の労組が存在するため、個々の労組の力が弱く、ドイツに比べリストラが行いやすいという事情がある。フォードがこのほどベルギーのヘンク工場閉鎖方針を打ち出したことについて、ベルギーの金属労組ABVV Metaalの関係者は「ドイツではIGメタルの力で閉鎖を免れる。ドイツは欧州の連帯を強調するが、実際には自国の利益を守るだけだ」と不満を表明した。

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