労働契約内容の遂行が不可能になるような経営上の問題を抱えている場合、雇用主は契約締結前にその事実を採用応募者に伝えなければならない。これは最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が過去に下した判決で確定した判例である。では会社で操短が行われている場合もその事実を伝える義務があるのだろうか。この問題をめぐる係争でラインラント・ファルツ州労働裁判所が10月に判決(訴訟番号:3 Sa 247/12)を下したので、ここで取り上げてみる。
\裁判を起こしたのは被告IT企業の営業部門に勤務していた元管理職。2010年11月3日に労働契約を結び、翌年1月1日付で採用されたが、6カ月の試用期間が終了する直前に解雇された。就職に当たってはそれまで勤めていた別の会社を自主退社した経緯がある。
\一方、被告企業のシステムコンサルティング・技術部門では原告が採用される前の10年3月から採用後の11年6月までの期間、受注減を受けて操業短縮が導入されていた。原告は、この事実を事前に知っていれば以前の会社を辞めて被告企業に就職することはなかったと主張。労働契約の締結前に被告が操短の事実を伝えなかったのは不当だとして、新たな就職先が決まるまでの期間、給与相当額の損害賠償を支払うよう要求し提訴した。
\第1審のマインツ労働裁判所は原告の訴えを棄却。第2審のマインツ州労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官は、雇用主が労働契約の締結前に応募者に経営状態を伝えなければならないのは、採用しても給与を支払えない可能性がある場合に限られると指摘。操短はそうしたケースに当たらないとの判断を示した。BAGへの上告は認めなかった。
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