これまで足踏み状態が続いていたドイツの海底送電線敷設計画が大きく前進する可能性が出てきた。三菱商事が送電事業者以外の投資家として初めて海底送電プロジェクトに参加することを表明。今後、他の投資家が続くことが期待できるためだ。海底送電網の整備は政府が取り組む再生可能エネルギーの普及加速政策(エネルギー転換政策)の大きな柱をなしており、レスラー経済相は同社の参画を「すばらしいニュースだ」と称賛した。
\蘭国営送電事業者テネットは16日、北海ドイツ海域の海底送電事業を三菱商事と共同実施することで合意したと発表した。計4つの海底送電プロジェクトを行う。プロジェクト名はそれぞれ「BorWin1」「BorWin2」「HelWin2」「Dol-Win2」で、そのうちBorWin1とBorWin2については昨年2月の時点で両社の基本合意が成立していた。BorWin1はすでに稼働している。
\4プロジェクトの送電容量は計2.8ギガワット(GW)で、ドイツ政府が北海で計画する総送電容量の約30%を占める。事業規模は29億ユーロに上り、そのうち約60%を融資で賄う。出資比率はテネット51%、三菱商事49%で、三菱商事は5億7,600万ユーロを拠出する。
\ドイツでは海底送電線の敷設遅延や送電障害が起きた場合の補償ルールが昨年まで確定せず、これが投資家と銀行融資獲得のネックとなっていた。また、海底送電線の敷設は◇陸上敷設に比べ技術的に難しい◇コストがかさみテネットの資金力では敷設できないが、オランダ政府は増資の引き受けを拒否していた――ため、同社は外部の投資家の出資を仰がなければならない状況に置かれていた。
\ドイツでは昨年12月にエネルギー経済法(EnWG)改正案が成立し、今年1月に施行された。これにより敷設遅延などの際の送電各社の補償負担額を年最大1億1,000万ユーロに制限。それを超える分については需要家である消費者や企業に転嫁できるようになったため、投資リスクが明確になり、投融資を得やすくなった。
\テネットの独法人社長は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に対し、三菱商事の参画は他の投資家の呼び水になると述べ、その意義を強調した。テネットのハルトマン社長によると、同社はすでに三菱商事以外の投資家とも出資交渉を行っているという。
\ドイツの高圧送電事業者は政府の計画に基づき、各担当地区の送電網を整備することを義務づけられており、テネットは北海を担当。同海域で計10の海底送電プロジェクトを運営ないし計画している。送電容量は合わせて5.3ギガワットで、投資規模は58億ユーロに上る見通しだ(表を参照)。
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