労災の適用対象となる「通勤」は家の玄関を出たところから始まる。これは最高裁の連邦社会裁判所(BSG)の判決で確定した判例である。この判例に絡んだ裁判でベルリン・ブランデンブルク州社会裁判所が昨年9月に判決(訴訟番号:L 2 U 3/12)を下したので、ここで取り上げてみる。
\原告は2008年6月2日、出勤のために家から出ようとした際に玄関の敷居につまずいてドアの外に転倒。ひざの骨を痛めて手術を受けた。このため労災認定を申請したところ労災機関は、原告は単に転倒したに過ぎず、歩くという適切な形で家の外に出てはいなかったとして、認定を拒否した。原告はこれを不服として裁判を起こした。
\1審のフランクフルト・アン・デア・オーダー社会裁判所は、労災が適用されるのは玄関を完全に出た後に起きた事故だとして、原告の訴えを棄却した。これに対しベルリン・ブランデンブルク州社会裁は、「重要なのは健康被害が起きた場所であり、転倒ないし怪我の原因となる出来事が起きた場所ではない」としたうえで、原告のひざが怪我の時点で玄関を出ていたのはことの性質上、明らかだと指摘。また、原告が歩いて外に出たか、転んで外に出たかの違いは重要でないとして、労災は適用されるとの判断を示した。最高裁への上告は認めなかった。
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