食品をめぐるスキャンダルがドイツで相次いでいる。ラザニアなどに馬肉が混入していた事件に続き、2月には鶏卵の偽装出荷が発覚。また3月に入ってからは飼料用とうもろこしから有害物質が検出されたことが発表された。政府は規制やチェック体制の強化を通してこうした問題の発生を抑制する方針だが、効果がどの程度上がるかには疑問が残る。
\馬肉問題は英国とアイルランドのスーパーで販売されていた冷凍のビーフバーガーから馬のDNAが1月中旬に検出されたことで発覚。その後、フランスやドイツなど欧州16カ国で馬肉が混入したラザニアやミートソースが販売されていることが確認され、欧州全域にまたがるスキャンダルに発展した。
\馬肉はルーマニアのと殺事業者がオランダの事業者に売却し、そこからフランスの卸売事業者に転売された。ルーマニアの事業者は馬肉と明示して販売したと主張しており、偽装を行った業者は現時点で特定されていない。
\鶏卵の偽装問題は農家がケージ飼いの鶏の卵を有機卵や放し飼い卵と偽って出荷していたというもので、現在、検察当局が捜査を進めている。捜査対象となっている事業者の数は150に上り、そのうち100は北部のニーダーザクセン州が占める。同州の事業者のおよそ15%が違法行為を行っていた疑いが持たれている計算で、偽装が幅広く行われてきたことがうかがわれる。
\飼料用とうもろこしに有毒で発がん性のある物質「アフラトキシンB1」が混入していた事実は、ニーダーザクセン州農業省が1日の発表で明らかにした。アフラトキシンはカビ毒の一種で、B1は毒性が最も強い。ドイツでは飼料1キログラム当たり0.02ミリグラムが許容上限値となっているが、問題となっている飼料からは最大でその10倍の量が検出された。
\同とうもろこしは農産物商社Alfred Toepfer Internationalがセルビアから輸入した。輸入量は4万5,000トンで、そのうち1万トンを計13の飼料メーカーに販売。牛、豚、家禽用の飼料に加工された。飼料は約4,500の酪農・家禽事業者に販売されており、牛乳から許容値(1キロ当たり50ナノグラム)を超えるアフラトキシンB1が検出された農家もある。
\セルビアでは収穫したとうもろこしからアフラトキシンB1が検出される問題が昨年夏に起こっており、Alfred Toepfer Internationalはこれを知りながら輸入していた可能性がある。
\ \小売大手の値下げ圧力背景に
\ \政府は馬肉・鶏卵スキャンダルを受けて、食品・飼料法の改正案を急きょ作成。1日の連邦議会(下院)で可決させた。偽装表示の疑いが濃厚な場合は偽装を行った事業者とその製品名を速やかに公表することを当局に認めるというもので、連邦参議院(上院)も今月下旬に可決する見通しだ。これまでは衛生上の重大な問題ないし健康上のリスクがないかぎりそうした措置は取れなかった。
\食品スキャンダルが相次ぐ背景には、偽装が発覚しにくいほか、食品メーカーや酪農事業者が小売店から極度の価格圧力をかけられているという事情がある。値下げに応じなければ取引を打ち切られるため、違法行為に走りやすい状況に置かれているのだ。連邦カルテル庁の調査ではAldiなど独食品小売の4大大手は国内市場の85%を押さえており、仕入れ交渉の主導権を握っている。
\ただ、小売大手各社も極度の価格競争にさらされている。その利益の最終的な享受者は消費者だが、食品スキャンダルからは安値を求める消費者が自分で自分の首を絞めている構図が浮かび上がってくる。
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