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2013/4/10

ゲシェフトフューラーの豆知識

整理一時金の減額、年金受給開始が近ければ妥当=最高裁

この記事の要約

企業が経営上の理由で人員削減を行う場合、労使が協議して「社会的計画(Sozialplan)」というリストラ計画を策定する。その際、年金受給が間もなく始まる定年退職間近の社員、つまり再就職の必要性がほとんどない社員の整理一 […]

企業が経営上の理由で人員削減を行う場合、労使が協議して「社会的計画(Sozialplan)」というリストラ計画を策定する。その際、年金受給が間もなく始まる定年退職間近の社員、つまり再就職の必要性がほとんどない社員の整理一時金を減額することは不当な差別に当るのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が3月26日に判決(訴訟番号:1 AZR 813/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは航空宇宙大手の系列会社から整理解雇を通告された元社員。同社は原告社員の勤務先であった事業拠点の閉鎖方針を2010年に決定し、同年6月に事業所委員会(Betriebsrat)との間で社会的計画を取り決めた。

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具体的には解雇の対象となる社員に対し原則として給与支給額、勤続年数、年齢に応じて整理一時金を支給することで合意した。ただ、解雇の時点で58歳以上の社員については公的年金の早期受給が可能になる年齢まで、失業手当を含めて支給額を給与の85%相当額に制限することにした。

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解雇時点で62歳に達していた原告の整理一時金は4,974.62ユーロとされた。原告はこれが不当な年齢差別に当るとして提訴。給与支給額、勤続年数、年齢に基づいて算出すると一時金の額ははるかに多くなるとして、23万4,246.87ユーロの追加支給を要求した。

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連邦労裁はこの訴えを棄却した。判決理由で裁判官は、◇社会的計画は転職に伴う被用者の経済的な不利益を相殺するために作成する◇整理一時金の財源には限りがある――ことを指摘。高齢社員向け整理一時金の額を、公的年金の早期受給が可能になる年齢までの経済的な不利益を相殺できる水準に制限することは差別に当たらないとの判断を示した。

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