モロッコ中部の都市ワルザザートで10日、大規模太陽熱発電施設の起工式が行われた。同発電所にはドイツから復興金融公庫(KfW)などが資金支援の形で参画しているが、発電する電力はすべて国内で消費され、欧州には輸出されない。独企業が中心となって進める、北アフリカ・中東にソーラー発電施設を建設し電力を欧州に供給する「デザーテック」プロジェクトも受注を全く獲得できないなど蚊帳の外に置かれており、自国の電力不足解消を優先する当事国の利害のカベに突き当たった格好だ。
\ワルザザートに建設される太陽熱発電施設の発電能力は160メガワットで、太陽熱による発電プラントとしては世界最大規模。2015年の稼働を予定しており、モロッコ住民50万人分の需要を賄える。建設予算は7億ユーロで、このうち1億1,150万ユーロをKfW傘下のKfW開発銀行と独連邦環境省が融資する。
\モロッコは現在、電力需要の2割を輸入に頼っており、輸入依存度の引き下げと、今後の経済発展に伴う電力需要のカバーが大きな課題となっている。このため同国は、20年までに国内5カ所に発電能力が計2,000ワットの太陽熱発電所を設置し、消費に占める再生可能電力の割合を42%に引き上げる目標だ。資金獲得に向けて電力の一部を輸出することも視野に入れているものの、今回のワルザザートのプロジェクトについてはあくまでも国内供給用との立場を崩していない。
\ドイツ政府は22年までに国内にある全原発を廃止する方針を打ち出しており、再生可能エネルギーによる発電能力確保を急ぐデザーテックにとって、ワルザザートのプロジェクトで締め出しを食らったことは痛手となる。モロッコに限らず北アフリカ諸国の多くは自国の電力不足に直面しており、これらの国を欧州向け輸出に前向きな姿勢に転換させられるかが大きな焦点となりそうだ。
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