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2013/6/5

総合 - ドイツ経済ニュース

洪水で道路や鉄道が一部不通に エルベ川は増水続く、ドレスデン冠水

この記事の要約

ドイツの南部と東部を中心に河川の氾濫が相次いでいる。冠水した地域では市民が自宅から避難。交通網は河川のほか、道路、鉄道も打撃を受けており、企業活動にも影響が出ている。事態を重くみたメルケル首相は4日、被災各地を訪問。1億 […]

ドイツの南部と東部を中心に河川の氾濫が相次いでいる。冠水した地域では市民が自宅から避難。交通網は河川のほか、道路、鉄道も打撃を受けており、企業活動にも影響が出ている。事態を重くみたメルケル首相は4日、被災各地を訪問。1億ユーロの緊急支援を約束した。

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ドイツや周辺国では5月の天候が不順だった。特に下旬には大雨が集中。バイエルン州の一部の地域では5月30日から6月3日未明の間に1平方メートル当り約400リットルの降水が記録された。これは年間雨量の40%に相当する規模で、河川はにわかに増水した。

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被害が深刻なのはドナウ水系とエルベ水系で、ドナウ川にイン川とイルツ川が合流するパッサウでは旧市街などが浸水。3日夜には水深が12.89メートルに達し、1954年に記録した過去最高を更新した。ひとまずピークは過ぎたものの、上流ではふたたび増水しており予断を許さない状況だ。

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エルベ支流のムルデ川ではグリマ市の市民2,000人が避難した。エルベ川では増水が続いており、ドレスデンでは通常2メートルの水位が5日朝の時点で8.27メートルを記録。一部地区は冠水した。

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道路はアウトバーンA8号線のベルナオ・アム・キムゼーとベルゲン間が閉鎖された。少なくとも6日まで通行できない見込み。全ドイツ自動車クラブ(ADAC)によると、バイエルン州では南部・東部を中心に通行規制が敷かれる道路が多いため、迂回に伴う渋滞が各地で発生している(道路情報についてはADACがサイトで情報を提供)。

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鉄道では南部のミュンヘン~ザルツブルク、トラウンシュタイン~ルーポルディング、ヴァイルハイム~ガルミッシュ・パルテンキルヒェン間などが不通だ。運行の遅れも出ており、ドイツ鉄道(DB)は臨時ホームページで情報を提供している。

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ライン川も増水しており、シュパイヤー~ビンゲン間とカウプで船舶が通行止めとなった。水量は5日をピークに減少に転じると予想されているものの、その後も数日は航行できない見通しだ。河川沿いの国道42号線ではエストリヒ~ヴィンケル間が冠水しため、一部区間で通行止めとなっている。

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ドイツの周辺諸国でも河川が氾濫しており、ポーランド西部・南部、チェコのエルベ川、モルダウ川沿いの地域、オーストリアで洪水に見舞われている。ドナウ川では今後、被害地域が下流のスロバキア、ハンガリーなどに広がりそうだ。

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スイスでは欧州の南北を結ぶゴットハルト峠の鉄道路線が大雨によるがけ崩れで2日夜から不通となっており、復旧は6日(木)となる見通し。

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景気に影響の恐れ

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独東部のツヴィッカウにあるフォルクスワーゲン(VW)の完成車工場では3日午前、生産を見合わせた。道路の冠水で従業員が出勤できないほか、部品を確保できない恐れもあったためだ。同工場ではコンパクトカー「ゴルフ」と中型車「パサート」を生産している。廃棄物処理施設メーカーのクローネスもローゼンヘルム、ラオプリング工場を休業とした。

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自動車部品大手ZFフリードリヒスハーフェンのパッサウ工場(グループヴェーク地区)は敷地が冠水したため、操業を停止している。生産ホールには浸水していない。

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ムルデ川沿いにあるビターフェルト・ヴォルフェンでは4日、国防軍の兵士が出動し土嚢の積み上げ作業を行った。バイエルやエボニクなどの化学メーカーが入居する工業団地への浸水を防ぐためだ。

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増水・洪水の影響は物流にも出ており、マンハイムの貨物ターミナルは部分的に冠水した。河川からトラック輸送などに切り替える動きが強まっているため、臨時の輸送料金が通常の2倍に上るケースもあるという。

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5月の悪天候が響き農作物の価格は上昇基調にあり、ジャガイモの価格は1年前より35%高くなっている。洪水の影響で今後さらに上がることが予想される。ドイツ商工会議所連合会(DIHK)のエコノミストは「(長雨と洪水は)景気にも影響する」とみている。

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