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2013/6/5

ゲシェフトフューラーの豆知識

仮病の疑いがあっても立証できなければ解雇できず

この記事の要約

病気と偽って欠勤した社員を雇用主は解雇できる。だが、仮病だったのか本当に病気だったのかが分からないケースでは仮病であることを裏付ける証拠を提示できない限り解雇できない。そんな判決をベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所が […]

病気と偽って欠勤した社員を雇用主は解雇できる。だが、仮病だったのか本当に病気だったのかが分からないケースでは仮病であることを裏付ける証拠を提示できない限り解雇できない。そんな判決をベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所が3月に下したので、ここで取り上げてみる(訴訟番号: 10 Sa 2427/12 )。

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裁判は被告企業で販売業務に従事していた社員が起こしたもの。同社員は2012年7月20日(金)の12時ごろ、同僚2人に対し「俺は病気だ。少なくとも来週の月曜日(23日)から1週間は休みを取らなければならない」と発言した。ただ同時に「医者に行くつもりはない」と述べていた。

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同社員は実際、23日に欠勤したため、雇用主は同日付で解雇する旨を明記した文書を作成。原告はこれを翌24日に受け取とると、同日中に医者の診療を受け、労働不能証明書(通称ゲルベシャイン)の発行を受けた。同証明書には23日から労働できない状態にあると記されていた。原告は雇用主が解雇を撤回しないため提訴した。

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これに対し雇用主は、原告が23日に欠勤したのは有給休暇の取得申請を拒否されたためだと主張。また、7月20日には終業時間の16時まで勤務しており、仕事をできる状態にあったのは明らかだとして解雇の正当性を訴えた。

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1審のベルリン労働裁判所は原告勝訴を言い渡し、2審のベルリン・ブランデンブルク州労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官はまず、仮に勤務できたとしても勤務を行うと健康に悪影響をもたらしその後、勤務できなくなることが予期できる場合は労働不能と見なされるとした労働不能指令(AURL)2条1項第3文の規定を指摘。原告は20日昼の時点でそのような状態にあることを示唆していたと認定した。

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そのうえで、解雇の理由となる問題行動を被用者が行ったことを立証する責任は雇用主の側にあるとした過去の最高裁判決を指摘。被告雇用主は原告が労働不能状態になかったことを裁判で立証できなかったとの判断を示した。最高裁への上告は認めなかった。

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