特定の日(Stichtag)に雇用関係が維持されていることを特別手当(Sonderzahlung)の支給条件とするルールを採用する企業は多い。では、特別手当が労働の対価である場合もこのルールを適用できるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が13日に判決を下したので、ここで取り上げてみる。
\裁判は出版社を退職した社員が同社を相手取って起こしたもの。同社では毎年12月31日時点で雇用関係が継続している社員に対し、1カ月分の給与と同額の特別手当を支給し、それ以前に退社した社員には支給しないルールがあった。また、特別手当には被用者が行った労働に対する対価という性質もあり、1カ月勤務するごとに手当の12分の1の額が加算されることになっていた。つまり、1月から12月まで勤務すれば1カ月の給与に相当する額の手当てを受給し、4月から採用された社員であれば月給の12分の9に相当する額を受給する決まりだ。
\原告は2010年9月末日付で退社した。このため、12月31日時点で雇用関係がなく、雇用主は特別手当を支給しなかった。これに対し原告は月給の12分の9に相当する手当の支給を要求。雇用主が受け入れなかったため提訴した。
\原告は1審と2審で敗訴したものの、最終審のBAGで勝訴した。判決理由で裁判官は、普通約款の作成使用者(ここでは被告出版社)が信義義務に反して契約相手(元社員)に不利な取り決めを行った場合、その取り決めは無効となるとした民法典(BGB)307条1項の規定を指摘。労働の対価であるにもかかわらず、中途退社した社員に手当を支給しないのはこれに該当するとの判断を示した。
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