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2013/12/11

ゲシェフトフューラーの豆知識

高齢者パートタイム適用者の未消化の有給休暇で最高裁判決

この記事の要約

ドイツには高齢者パートタイム(Altersteilzeit)という制度がある。55歳以上の高齢労働者の労働時間を半減するというもので、企業の人員削減の際によく利用される。\ 同制度の利用方法は大きく分けて2種類ある。1つ […]

ドイツには高齢者パートタイム(Altersteilzeit)という制度がある。55歳以上の高齢労働者の労働時間を半減するというもので、企業の人員削減の際によく利用される。

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同制度の利用方法は大きく分けて2種類ある。1つはパートタイムの全期間を通して、日々の労働時間を半減するもので「均等分配モデル(Gleichverteilungsmodell)」と呼ばれる。もう1つは「ブロックモデル(Blockmodell)」というもので、パート期間の前半はこれまで通りフルタイムで勤務。後半は給与の支給を受けるものの勤務を全面的に免除され、事実上の退職生活に入る。ほとんどの企業はブロックモデルを採用する。

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ではブロックモデル方式の対象となった被用者が勤務期間中(勤務免除となる以前)に有給休暇を消化しきれなかった場合、これらの有給休暇はどのように取り扱われるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年10月に判決(訴訟番号:9 AZR 234/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判は鉄鋼業界の企業に勤務していた社員が同社を相手取って起こしたもの。原告は2005年5月1日~10年4月30日の期間、高齢者パートタイム制度の適用を受けた。雇用主と結んだ契約では07年10月末まで勤務し、翌11月1日から10年4月30日までは勤務を全面的に免除するというものだった。

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原告は07年8月中旬から長期病欠し、勤務期間が終了する10月31日を過ぎても就労不能状態(Arbeitsunfaehigkeit)が続いていた。このため、07年の有給休暇あわせて30日のうち実際に取得できたのは21日にとどまり、9日分が未消化となっていた。

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原告は、未消化となった9日分の有給休暇を現金に換算して受給する権利を一時、断念したものの、09年9月になって会社側に要求。これが受け入れられなかったため提訴した。裁判では9日分の換算額1,087.38ユーロに5%の金利を付けて支払うことを要求した。

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原告は1審と2審で勝訴したものの、最終審のBAGは逆転敗訴を言い渡した。判決理由で裁判官はまず、未消化の有給休暇を現金化して受給できるのは、有給休暇法(BUrlG)7条4項の規定により雇用関係が終了した後だと指摘。原告と被告企業の雇用関係が終了するのは10年5月1日以降であり、原告は裁判を起こした時点で請求権がなかったとの判断を示した。

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そのうえで被告企業が属する鉄鋼業界の労使協定に、病気理由で当該年度中に有給休暇を取得できなかった被用者は翌々年の3月末まで取得する権利があるとする取り決めがあることを指摘。原告の場合は09年3月末がその期限だとして、有給休暇を取得する権利は提訴の時点ですでに失効していたと言い渡した。

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今回の判決ではブロックモデル方式で高齢者パートタームの対象となった被用者について、未消化の有給休暇を現金化して受給する権利は勤務免除期間が終了するまで発生しないとする一方で、勤務免除期間中に請求権が失効し得るとの判断が示された。(勤務免除期間中は仕事がなく有給休暇を取得すること自体が不可能なため、勤務免除期間の終了後に現金化して受給する権利のない者は未消化の有給休暇の権利を喪失することになる)。

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