自動車大手のFordが小型ハッチバック車「Fiesta」の生産拠点をドイツのケルン工場からルーマニアのクラヨバ工場に移管することを検討している。ドイツは人件費が高く、利益が出すのが難しいためで、ケルン工場では現在、労使が労働条件などを交渉中だ。移管するかどうかの決定は年内に下す意向という。同社関係者への取材をもとに15日付『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙が報じた。
欧州市場向けのFiestaはケルンのニール地区にある工場で35年前から生産しており、累積の出荷台数は700万台を超えた。ただ、現在の労働条件では利幅の小さい小型車を生産しても利益を出すのが不可能といい、労使は現在、労働条件の柔軟化や賃金引下げについて交渉している。
独デュースブルク・エッセン大学自動車リサーチセンター(CAR)のデータをもとにFAZ紙が報じたところによると、ルーマニアの賃金は1時間当たり5ユーロ弱でドイツの10分の1にとどまる。Fiestaの生産に30時間を要すると仮定すると、ドイツの人件費は1台当たりおよそ1,300ユーロ高い計算だ。
クラヨバ工場では現在、Fiestaをベースとするバン「B-Max」を生産している。稼働率は低い。Fiesta生産を同工場に移管する場合は、2016年に市場投入する次世代モデルからとなる。
欧州では乗用車市場の低迷が続いており、13年は07年の4分の3の規模にまで縮小した。本格回復のめどは立っていない。割安感のあるDaciaや現代などの競合ブランドが急速に伸びていることもあり、Fordの欧州事業は毎年、数億ユーロ規模の赤字が続いている。コスト削減に向けて12年10月にはベルギーのヘンク工場と、英サザンプトン、ダグナム工場の閉鎖方針を打ち出した。