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2014/4/2

総合 - ドイツ経済ニュース

独産業立地競争力に黄信号、コスト上昇で製造業に国外流出の兆し

この記事の要約

コスト削減を目的に国外工場の設置を計画する企業が11年ぶりに増加したことが、独商工会議所連合会(DIHK)が3月31日に公開した製造業アンケート調査レポートで分かった。再生可能エネルギーの拡充に伴う電力コストの上昇と、政 […]

コスト削減を目的に国外工場の設置を計画する企業が11年ぶりに増加したことが、独商工会議所連合会(DIHK)が3月31日に公開した製造業アンケート調査レポートで分かった。再生可能エネルギーの拡充に伴う電力コストの上昇と、政府が計画する年金制度改革、最低賃金の導入が反映されたもようだ。DIHKのマルティン・ヴァンスレーベン専務理事は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に「ドイツの産業立地条件に対する最初の警告信号だ」との見方を示した。

DIHKは毎年初、独製造業を対象にアンケート調査を実施しており、今年は2,500社から回答を得た。それによると、国外投資を今年計画する企業は全体の45%を占めた。昨年の46%からはやや後退したものの、高い水準が続いている。

また、国外投資額を「増やす」との回答は前年の32%から33%に上昇。「減らす」が16%から13%に減少したため、両回答の差は前年の16%から20%に広がった。ドイツ企業の国外事業がこれまで以上に活発化することが予想される。

投資予定先の地域・国として最も回答(複数回答可)が多かったのは欧州連合(EU)に以前から加入する西欧15カ国(EU15)で、前年の40%から46%へと大きく増加。中国を抜いて4年ぶりにトップとなった。財政・経済危機に陥った国で構造改革が行われ産業立地としての魅力が高まったことが反映されたもようだ。中国は2位に転落したものの42%(前年43%)と高い水準を保っている。3位は北米で前年と同じ30%だった。

国外投資の主な目的では、進出先地域・国でのプレゼンス強化が全体の79%を占めた。内訳は「販売・顧客サービス」が45%、「国外生産による市場開拓」が34%となっている。(グラフ1を参照)

生産コストの削減目的で国外投資を行うとの回答は21%だった。独経済界で構造改革が大規模に行われた2000年代前半に比べると数値は低いものの、前年の20%から1ポイント増加。11年ぶりに増加へと転じた。

ドイツでは発電コストが割高な再可エネの促進策を受けて電力料金が上昇し、大きな問題となっている。政府はこれを受け製造業に認めてきた再可エネ助成分担金の負担軽減を削減する方針を打ち出しており、エネルギー集約型企業は国内拠点の維持が難しくなっているようだ。早期退職を促進する恐れのある年金改革と、全国・全業界一律の最低賃金(時給8.5ユーロ)の導入も企業にとっては競争上のマイナス要因となる。

生産コスト削減目的で実施予定の国外投資の対象地域では、EUの新規加盟国(04年以降の加盟)が32%で圧倒的に多かった。距離的に近いほか、同じEUに属し貿易上の制限がないことがプラスに働いているもようだ。中国は同14%、中国を除くアジアも16%にとどまった(グラフ2を参照)。