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2014/4/30

総合 - ドイツ経済ニュース

シーメンスがアルストム買収方針を決定、GEに対抗

この記事の要約

重電大手の独シーメンスは29日、仏同業アルストムを買収する方針を正式に決定した。競合の米ぜネラル・エレクトリック(GE)がアルストム買収を狙っていることを受けた措置。GEはアルストムを取得すると、欧州市場での存在感を大幅 […]

重電大手の独シーメンスは29日、仏同業アルストムを買収する方針を正式に決定した。競合の米ぜネラル・エレクトリック(GE)がアルストム買収を狙っていることを受けた措置。GEはアルストムを取得すると、欧州市場での存在感を大幅に高めることから、シーメンスはこれを阻止したい考えだ。アルストムは「フランスの産業力のシンボル」(モントブール仏経済相)と目されているため、どちらが買収するかは政府の意向にかかっているが、いずれの場合も世界の重電業界に大きな影響を与えそうだ。

アルストムをめぐっては、23 日にGE が主力の電力関連機器事業を買収するとの観測が報じられた。両社は当初、明確なコメントを控えていたものの、事実関係を確認したフランス政府は27日、GEとシーメンスがアルストムの買収をそれぞれ検討していることを明らかにした。

アルストムは経営環境が悪化し、将来的に単独で生き残るのが難しくなっている。主力の火力発電事業は欧州での再生可能エネルギー発電の急増や、シェール革命を受けて需要が減少。鉄道車両の受注も主要顧客であるフランスを含む欧州諸国の財政悪化を背景に先細りの恐れがある。

アルストムの経営陣は事態の打開に向け、GEに電力関連機器事業を売却する方向で交渉を進めてきた。GEとは事業の重複が少ないため、シナジー効果が大きく、取引成立後の雇用削減も小規模にとどまるというメリットがあるためだ。GEは総額169億ドルでアルストムの同事業を買収する意向。

経営陣はGEと交渉している事実を政府に伏せていた。だが、アルストムが原発、鉄道などの中核事業で国と関係が深く、政府がGEとの取引に対し拒否権を発動できることを踏まえると、これは大きな失策だった。

政府内では経営陣の「極秘行動」への批判のほか、GEへの売却計画そのものに反対する意見も強い。モントブール経済相は「(GMに売却すると)アルストムの事業の75%が米コネチカットから直接、指揮されるようになる」と懸念を表明した。

「エネルギー分野のエアバス」構想

シーメンスはGMの買収計画をメディア報道で知り、急きょアルストムの買収に乗り出した。アルストムに宛てた27日付の書簡をもとに各種メディアが報じたところによると、アルストムの売り上げの70%強を占める電力関連事業を譲り受け、代わりに鉄道事業を譲渡することを暫定的に提案している(グラフ1を参照)。アルストムの電力関連事業の時価を100億~110億ユーロと見積もった。仏政府と従業員の意向を踏んで、買収後3年間はアルストムの事業拠点閉鎖と従業員削減を行わないことも約束している。今後は買収計画の策定に向けてアルストムの資産査定を行う。

仏政府内には、仏アエロスパシアルと独DASAの合併で成立した欧州航空機大手エアバスを手本にアルストムとシーメンスが一体化することを望む声がある。オランド大統領は1月時点で、「エネルギー分野のエアバス」の創設を提唱している。

ただ、アルストムとシーメンスは火力発電、送電網、鉄道分野で事業が大きく重複しており、欧州連合(EU)の欧州委員会が両社の取引を承認しない恐れもある。

世界の重電業界ではGEがダントツの1位で、『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、売上高は1,100億ユーロに上る(グラフ2を参照)。シーメンスは759億ユーロで2位。東芝は446億ユーロ、ABBは302億ユーロ、アルストムは203億ユーロと上位2社に水をあけられている。シーメンスがアルストムを買収すると、上位2社とそれ以外の企業の差がさらに広がり、GEが買収した場合は同社の独走態勢が強まることになる。