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2014/4/30

ゲシェフトフューラーの豆知識

企業年金引き上げルールで最高裁判決

この記事の要約

雇用主は退職者に支給する企業年金の引き上げを物価動向を踏まえて3年に1度検討しなければならない。これは企業年金法(BetrAVG)16条1項で定められたルールである。このルールをめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG […]

雇用主は退職者に支給する企業年金の引き上げを物価動向を踏まえて3年に1度検討しなければならない。これは企業年金法(BetrAVG)16条1項で定められたルールである。このルールをめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が15日に判決(訴訟番号: 3 AZR 51/12)を下したので、取り上げてみる。

裁判はドレスナー銀行のOBが同行を買収したコメルツ銀行を相手取って起こしたもの。同OBは1998年からドレ銀の企業年金を受給していた。ドレ銀は3年に1度、支給額を引き上げていた。

同行は2009年5月、コメルツ銀に吸収合併された。当時はリーマンショックの影響もあり、コメ銀は経営状況が悪く、赤字を計上。公的資金の注入を受けていた。このためコメ銀は10年1月の年金引き上げを見合わせた。

原告はこれを不当として提訴。物価上昇に合わせて年金支給額を引き上げるよう要求した。

1審と2審は原告敗訴を言い渡し、最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由で裁判官は、年金支給額は受給者の利害のほか、企業の経済状態も配慮したうえで、「公正な裁量に従って(nach billigem Ermessen)」決定しなければならないとしたBetrAVG16条1項中の規定を指摘。コメ銀は10年1月時点で支給額を引き上げられない状況にあったとして、引き上げを見合わせたのは妥当だとの判断を示した。