一定基準以上の身長に達していることをパイロットの採用条件とすることは、一般平等待遇法(AGG)で禁じられた差別に当たる――ケルン州労働裁判所が6月の判決(訴訟番号:5 Sa 75/14)でそんな判断を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判はルフトハンザのパイロット募集に応募した女性が同社とパイロット養成子会社ルフトハンザ・フライト・トレーニングを相手取って起こしたもの。ルフトハンザは応募者の選考を行い、採用者はルフトハンザ・フライト・トレーニングで訓練を受けることになっていた。
ルフトハンザでは身長165センチメートル未満の者をパイロットとして採用しないことが、労使協定で取り決められている。原告は身長が161.5センチで、同規定を3.5センチ下回っていたため、不採用となった。
原告はこれを受け、女性は平均的にみて男性より身長が低く、ルフトハンザのパイロット採用基準はAGGで禁じられた女性に対する間接的な差別に当たると主張。損害賠償と慰謝料、合わせて13万5,000ユーロの支払いを求め被告2社を提訴した。
2審のケルン州労裁は審理のなかで、パイロットの最低身長基準がルフトハンザよりも大幅に低い航空会社があることを指摘。165センチ以上を採用条件とすることには客観的な根拠がなく、違法な間接差別に当たるとの判断を示した。
ただ、損害賠償と慰謝料の支払い請求については原告の訴えを退けた。判決理由で裁判官はまず、AGGに基づいて原告が損賠と慰謝料を請求できるのは、採用されていれば雇用主となっていたルフトハンザ・フライト・トレーニングに限られ、選考を行ったに過ぎないルフトハンザに対しては請求権がないと指摘。そのうえで、ルフトハンザ・フライト・トレーニングに対する請求で原告の控訴は1審判決の内容を十分に踏まえていないとして、訴訟手続き上の問題を理由に同社に対する訴えを却下した。
また、ルフトハンザに対する請求についてはまず、原告が損害賠償を請求するためにはAGGを根拠するほか手段がないが、今回の係争では(パイロット訓練生として採用されてもとりあえず雇用主とはならない)ルフトハンザはAGGに基づく損賠請求の対象にならないと指摘。また、同社に対する慰謝料請求についても、同請求の前提となる人格権の侵害が認められず、原告には請求権がないとの判断を示した。
裁判官はルフトハンザとの係争についてのみ、最高裁(連邦労働裁判所)への上告を原告に認めた。