事業拠点を閉鎖したり統廃合する場合、雇用主はその事実を事業所委員会(Betriebsrat)に速やかかつ包括的に伝えたうえで、その措置に伴い従業員が受ける影響の緩和に向けて事業所委と協議しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)111条、112条に記されたルールである。このルールにからむ係争で、ベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所が6月に決定(訴訟番号:7 TaBVGa 1219/14)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判はIT企業の事業所委員会が同社を相手取って起こしたもの。同IT企業はベルリン市内のS拠点とT拠点で働く従業員323人のうち20人を7月1日付で新設のA拠点に転勤させることを計画した。
計画を伝えられた事業所委は、計画が実施されると既成事実が作られてしまい、転勤を命じられた従業員の利害を守るために経営陣と行う交渉を十全に行えなくなると主張。転勤の差し止めを求める訴訟を起こした。
1審のベルリン労働裁判所は原告の訴えを棄却。2審のベルリン・ブランデンブルク州労裁も1審判断を支持した。決定理由で裁判官は、事業所委はBetrVG111条、112条に基づき、転勤に伴い従業員が受ける不利益の緩和・相殺に向けて雇用主と交渉できるものの、転勤命令そのものを差し止める権利はないとの判断を示した。最高裁への抗告は認めなかった。