セクシャルハラスメントは男女差別に当たるとして、一般平等待遇法(AGG)3条4項で禁じられている。同7条3項で「契約義務違反」とも明記されており、雇用主はセクハラを行った社員を処分しなければならない。処分の程度はケースによって異なり、即時解雇が妥当なこともあれば、そうでないこともある。セクハラ解雇の是非を問う係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年11月に判決(訴訟番号:2 AZR 651/13)はこの問題を考える際に参考になるので、ここで取り上げてみる。
裁判は自動車修理場に勤務する工員が雇用主を相手取って起こしたもの。同工員は2012年7月27日、同社を訪れていた清掃会社の女性社員に対し、「いい胸をしているな」と話しかけたうえで、女性の意志に反してその胸を触った。
雇用主はこれを受けて即時解雇を通告。原告はこれを不当として解雇撤回訴訟を起こした。
原告は1審で敗訴したものの2審で勝訴。最終審のBAGも2審判決を支持した。判決理由で裁判官は◇現場を見た第3者がいなかったため原告は犯行を否認しようと思えばできたにもかかわらず、雇用主のとがめをうけてすぐに事実を認めた◇被害者宛てにすぐに詫び状を書き、許しを得た◇刑事訴訟で和解し慰謝料を支払った◇16年間の勤続期間中に一度も問題を起こしていない◇セクハラは今回が初めてだった――と指摘。これらの事情から総合的に判断すると処分は警告が妥当だとの判断を示した。