ドイツのアレクサンダー・ドブリント交通相は3日、鉄道の騒音を2020年までに半減する方針を明らかにした。騒音防止インフラ投資を拡充するほか、騒音の少ないブレーキの採用を貨物車両に義務づける考えだ。道路利用を減らし鉄道輸送を拡大する方針を実現するためには、騒音を削減し路線周辺住民の理解を得なければならないという事情が背景にある。
政府与党は鉄道貨物会社に対し、保有する車両の少なくとも半分について騒音の少ないブレーキに切り替えることを、2016年までに義務づける方針を13年末の政権協定に盛り込んだ。これを実現できない会社に対しては運転速度制限や夜間走行の禁止を適用するとしている。
これに対しては業界団体が、同年までに騒音の少ないブレーキを装備できるのは全車両の35%にとどまるとして方針の見直しを要求。また、最高速度が時速70キロに制限されると、輸送コストが10%上昇し、ドイツの鉄道貨物輸送能力も30%低下すると警告している。
ドブリント交通相はこうした批判を踏まえ今回、速度制限や夜間走行の禁止を見合わせる考えを示唆した。ただ、20年以降は騒音の少ないブレーキを装備しない車両の走行を全面禁止するとした政権協定の取り決めについては順守する考えだ。
ドイツを走行する鉄道貨物車両は18万両に上る。そのうち6万両はドイツ鉄道(DB)が運行。残りは国内の運輸事業者(計6万両)と国外の事業者(6万両)が運行している。政府はDBと国内事業者が騒音の少ないブレーキに切り替える場合、助成金を交付する考え。
DBはこれまでに1万4,500両でブレーキを交換した。年内にこれを2万両に増やし、20年までに全車両で交換を終了する計画だ。交換コストは1両当たり約2,000ユーロに上る。