ギリシャのチプラス首相は23日から24日にかけてドイツを訪問した。欧州連合(EU)のギリシャ向け金融支援をめぐり両国関係が悪化したことを受けて、ドイツのメルケル首相が招待。チプラス首相の就任後、初の訪独が実現した。両首相は良好な雰囲気を演出し両国関係の改善に努めたものの、支援をめぐる溝は依然として深いもようだ。
ギリシャ政府は2月下旬、EUによる金融支援延長の条件となる財政改革案のリストをEUに提出し、ユーロ圏の財務相の電話協議で承認された。これによってギリシャは2月末が期限だった金融支援の4カ月延長が決まり、財政破綻の危機をとりあえず回避した。
承認された改革案リストは今後の協議のたたき台となるもので、4月末までに詳細を詰め、EUなどから正式な同意を取り付ける必要がある。だが、ギリシャ政府はその後、具体的な改革案を一向に示さないうえ、同国の閣僚からナチスによるギリシャ支配の賠償として国内にあるドイツの資産を国有化するといった不適切な発言が相次いだ。ドイツのショイブレ財務相への個人攻撃もあり、もともと良好でなかった両国政府の関係は一気に悪化。普段は冷静なショイブレ財務相は「ギリシャ政府は信頼をすべてぶち壊した」と怒りをぶちまけた。
メルケル首相はこうした事態を受けて、チプラス首相を招待した。チプラス首相は就任当初、ドイツを他のEU加盟国から孤立させるために訪独を意図的に控えていた経緯がある。
両首相が話し合った内容の詳細は伏せられているものの、ドイツ政府はギリシャの債務問題が最大のテーマだったことを明らかにした。ギリシャ政府は24日、ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)が要求する改革案を30日までに提出する考えを表明した。
ただ、ギリシャの与党は緊縮路線の放棄を選挙で前面に押し出し政権を握ったことから、ユーログループに大きく譲歩し国民の反発を招くような大胆な改革に踏み切ると政権基盤が揺らぎかねないというジレンマを抱える。このため、30日までに提出する改革案がユーログループから承認されない可能性は十分にあり、独与党・社会民主党(SPD)のオッパーマン院内総務は、ギリシャのユーロ圏離脱の可能性は依然として排除できないとしている。