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2015/5/27

経済産業情報

汎用樹脂価格が欧州で上昇、製造元に「不可抗力条項」悪用の疑い

この記事の要約

石油価格が大幅に下落したにもかかわらず、石油を原料とする汎用樹脂の価格が欧州で大きく上昇している。製造元は口をそろえて「不可抗力(フォース・マジュール)」により供給できなくなったと顧客の樹脂加工メーカーに通告。そのうえで […]

石油価格が大幅に下落したにもかかわらず、石油を原料とする汎用樹脂の価格が欧州で大きく上昇している。製造元は口をそろえて「不可抗力(フォース・マジュール)」により供給できなくなったと顧客の樹脂加工メーカーに通告。そのうえで新規の価格交渉を行い値上げを図っているという。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が独自取材をもとに報じた。

それによると、ヨーグルト容器や樹脂ホイルなどに用いる低密度ポリエチレン(LDPE)の価格は2月の1トン当たり1,200ユーロから5月には同1,660ユーロへと40%上昇した。汎用樹脂メーカーは供給契約に盛り込まれたフォース・マジュール条項を楯に供給を停止したうえで、値上げを要求するため、取引先の樹脂加工メーカーは受け入れざるを得ない状況だ。業界団体によると、同条項を根拠とする供給停止件数は包装用フィルムなどの原料であるポリオレフィンだけでも年初からこれまでに欧州全体で31件に上る。

樹脂加工メーカーが原料費の上昇分を川下の日用品、食品メーカーに転嫁することは事実上できない。これら川下メーカーの多くが世界的な大手企業であるのに対し、樹脂加工メーカーは事業規模が比較的小さく、価格交渉力が弱いためだ。

フォース・マジュール条項は大地震、火災、ストライキ、洪水などの「不可抗力」で生産が大幅に滞った場合に適用できる。本当にそうした事態に陥っているかを証明する義務はない。

ライオンデルバセル、サウジ基礎産業公社(SABIC)、ベルサリスといった汎用樹脂メーカーの生産能力が「不可抗力で」そろって低下していることは考えにくい。可能性としては、これら企業は自ら石油事業を手がけるか石油大手の子会社であるため、石油価格の急落で生じた利益の穴を埋めるためにフォース・マジュール条項を悪用して値上げを行っていることが考えられる。ただ、そうした観測を裏付ける証拠の確保は極めて難しいという。

樹脂加工メーカーはこうした事態の改善に向けて欧州連合(EU)の欧州委員会に対策を要請した。契約通りに樹脂を納入しているかどうかに基づいて樹脂メーカーを評価する格付け制度の立ち上げを求めているという。